よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 そんなある日、雨に濡れて帰ってきた兄ちゃんは酷い熱を出した。

 オレは自分の分の食事を、無理矢理兄ちゃんに食べさせた。

「兄ちゃん、明日ぐらいゆっくり休んでくれよ……」

 それでも、兄ちゃんは苦しそうに言った。

「……ダメだ。お前の分の食料がない……」

「オレ、ちゃんと稽古に行くよ!」

「でも、お前には、ここの道場は向いてないだろう……」
 
「オレだって、頑張って退治屋になるよ!」

「ダメだ……俺が稼いで、お前をここから早く、出してやらないと……」
 
 必死に訴えるオレに、兄ちゃんは消え入りそうな声でそう言うと、静かに眠りについてしまった。

 オレはその後も、ずっと兄ちゃんの横についていた。

(……なんなんだよ。自分のこと考えろよ……)


 
 次の日の朝、オレはふと目を覚ました。

 オレは布団に兄ちゃんがいなくなっているのに気づいて、慌てて辺りを見回した。

「兄ちゃん? なにやってんだよ!」

 オレは、フラフラと出かけようとしている兄ちゃんに駆け寄った。

「……仕事に、行ってくる」

 兄ちゃんの顔は赤くて、どう考えてもまだ熱がありそうだった。
 オレは兄ちゃんに怒鳴り散らした。

「なに言ってんだよ! いい加減にしろよ! そんなんで、できるわけないだろ?」

 オレが兄ちゃんの腕を掴もうとしたときだった。
 兄ちゃんはオレが手を触れる前に、ばったりとその場に倒れてしまった……。

「にぃちゃん!」


 
 オレは道場を休み、兄ちゃんを布団に寝かせて看病し続けた。

「……っ光我、腹減っただろ。ごめん……な……」

 オレは、そんな兄ちゃんを見てられなかった……。

(なんで……なんでだよ……)