よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 オレたちは、まだ幼い頃に村も家も両親も失くした。

 オレはまだ八つで、兄ちゃんはまだ十二の頃だ。

 あの日オレは兄ちゃんより早く道場が終わって、家へ帰ろうとしていた。
 道場はオレたちが住んでる村の隣の里にあったから、少し家からは遠かった。

 村が見えてきたとき、オレは村の様子がおかしいことに気づいた。
 村の方から煙が見える。

(なにかあったのか? 火事?)

 オレは不安になって、兄ちゃんを待とうかと立ち止まったけど、自分の家も心配だったから、思い直して村へ向かって走り出した。

 村の外れまで辿り着くと、ちょうどその様子が見え始めた。

「——っなんだよ、これ!」

 オレは思わず息を呑んで立ち尽くした。
 村は荒れ果て、いたるところに血が飛び散り、バラバラに引き裂かれた人の手足や身体の部分、剥き出しになった骨なんかがそこら中に転がっていたんだ。

 オレは震える足で立っているのがやっとだった。

 そのとき、後ろから兄ちゃんの呼ぶ声が聞こえた。

「光我!」

 兄ちゃんは息を切らしながら、オレの方へ駆けて来た。

「兄ちゃん! 村が……っ」

 オレは半泣きになりながら、兄ちゃんにしがみついた。
 兄ちゃんは力強くオレを抱きしめると、すぐに身体を離して早口で言った。

「良かった無事で。ついさっき、里にたくさんのアヤカシが襲ってきたらしいんだ。道場にいたからよく知らないけど、俺たちの村の方から来たって聞いたから……」

 兄ちゃんは言い終わると、オレの手を掴んで走り出した。

「とにかく家を見に行こう!」