よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー



 
 ——ザクッ!


 
 刀が突き刺さる鈍い音がした。
 光我は目の前の光景に目を見開いていた。
 彼の前には、影利が立ちはだかっていたのだ。
 刀はその背をも突き抜けていた。

 座朗は顔をしかめて刀を引き抜く。

「邪魔をしおって……」

 影利はその場にくずおれた。
 光我は目の前の座朗には目もくれず、兄の元へ座り込む。

「にぃちゃん!」

 座朗はそれでも、容赦なく刀を振り下ろす。
 
 そのとき、空から黒い影が舞い降りた。


 
 ——ギィイィン!


 
 光我と影利の前には、夜助が、座朗の刀を薙刀で食い止めていた。
 夜助はギリギリと薙刀で刀を受けながら、座朗を真っ黒な鋭い瞳でギロリと睨んだ。

「貴様、なぜ光我に刀を向けた」

 座朗は刀に力を込めながら淡々と答える。

「目障りだからだ。情を捨て切れず、甘さを捨て切れず弱いまま……。いつまでも弱い奴は必要ない」

 夜助は座朗の刀を振り払うと、怒りを露わにした。

「…………貴様」


 
 光我は影利の傍らで身を乗り出し、必死に彼を揺さぶっている。

「オイ! しっかりしろよ!」

 影利は薄っすらと目を開けて、苦しげに口を開いた。

「……っ光我……大丈夫だったか……?」

 光我はグッと歯を噛みしめると、思いっ切り怒鳴り散らした。

「……っオレは、昔っからお前のそういうところが大っ嫌いなんだよ! 兄ちゃん!」