よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

「危ない!」
 
 かずみが突然叫んで、再び逆の方向へ走り出した。
 その先には逃げ遅れた一人の幼い少年が、大蛇の尾に今まさに振り飛ばされんとしていたのだ。
 かずみはその少年を抱え込むのが精一杯だった。
 小雨が慌ててかずみの方へ駈け出したが、遅過ぎた。
 大蛇の尾は、かずみと少年へと左払いに振り払われた。


 
 ——ザクッ!


 
 かずみと少年の目の前に、一人の少女が躍り出たかと思うと、大蛇の尾を二本の刀で斬りつけたのだ。
 
「……え?」
 
 かずみは呆気にとられて、その少女を見上げた。
 長い髪を頭の上に一掴みほど結い上げた美しい顔立ちの少女だ。
 瞳も凛々しく美しく、黒の丈の短い小袖を着ている。
 背丈はかずみより少し高い程度で、歳もそう違わないだろう。
 
「影利(かげり)!」
 
 その少女が叫ぶと、一人の青年が大蛇へ向かって刀を振りかざしながら、現れた。
 あっという間にその青年は、抑えられている大蛇の喉元へ刀を突き立て、息の根を止めたのだ。
 
 その青年はスラリと背が高く、落ち着いた瞳をしている。
 歳は三人よりいくらか上のように見えた。