よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 その後、影利と来華は、他のみんなに今あったことを説明し、みんなで女将に娘のことを話して聞かせた。

 女将は涙を流しながら、みんなに礼を言った。
 影利は女将の娘から預かった、小さな赤い櫛を彼女に手渡した。

「これは、娘の最後の誕生日に私があげたものです。まさか本当に死んでいたなんて……。でも帰って来てくれて良かった……」

 女将は大事そうに、その櫛を両手で包み込む。
 不意に来華が首を傾げて尋ねた。

「でも、女将さん。なんで、あたしたちを怖がらせるような顔をしたりしたの?」

 すると、女将は涙を拭ってニヤリと笑った。

「いやぁ、人を脅かすことが好きなもんでして」

(……娘さんが化けて出たのって、この女将さんに似たんじゃ……)

 みんなはそう思って苦笑いをした。



 夕飯を食べながら、みんなは気持ちもすっかり晴れて、楽しく会話をしていた。

 海刃がご飯を頬張りながら口を開く。

「——れにしても、影利しゃんが徐霊もできうとあ、驚いたな!」

「しゃべるか食べるか、どっちかにしろよ……。そう言えば私たちの中でも、よろずだけが、少し似たようなこともできるんじゃなかったか?」

 かずみが呆れた顔で海刃を見つつ、不意に思い出す。
 小雨がそれに答えた。

「うん、よろず、神社で育てられてたときに、いろいろ神主さんから習ったって言ってたから」

 徐霊師や祈祷師がするような、お祓いや除霊といったものは、寺や神社で特別に修業した者で、しかもほんの一握りほどしかできない、難しい技なのだ。
 霊などの『もののけ』を扱うことができる。

 来華は感心した様子だ。

「へぇ、徐霊できるなんてすごいね。霊なんて実体ないし、よくわかんないし怖いのに……」