よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 来華と小雨は二人で肌寒い部屋の中、かずみの帰りを待っていた。
 来華は不安になり始めてつぶやいた。

「それにしても、あの女将さんが、そう簡単に口を割るかなぁ」

「やっぱり様子だけでも見てこようよ」

 小雨がそう言って立ち上がる。

「そうだね。じゃ、行こっか!」

 来華もそれに続く。
 まさにそのとき、ピカッと辺りが照らし出され、ものすごい雷の音が鳴り響いた。

「うわぁ!」

 来華は驚いてよろめく。
 行灯の灯りはチラチラと揺れた後、フッと消えてしまった。

「び、びっくりしたね……。小雨?」

 来華は、黙ってうつむいたまま立っている小雨を、不思議に思って声をかける。

「どうしたの? そんなに怖かった? かずみのところ行こ?」

 すると小雨は、突然来華にしがみついてきた。

「だめよ……行かせない……」

「ちょ、小雨?」

 来華は慌てふためいて、彼女を引き剥がそうともがいた。

「私のこと……言わないで……」

 小雨はそう言うと、虚ろな瞳で来華を見上げる。
 その瞬間来華は彼女の姿と重なって、血まみれの長い髪の女の姿を垣間見た。

「いやぁ! やめて! あんた誰よ? 小雨、しっかりして!」

 来華は必死に暴れたが、小雨は、いや、その女は彼女にしっかりとしがみついて離れない。