よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 かずみは独り、二階の廊下を階段へ向かって歩いていた。

 ——ゴロゴロ

 雷の音にビクビクしながらも、なんとか歩き続ける。
 ちょうど一階へ続く階段に差し掛かったとき、向こうから足音が響いてきた。
 薄暗くてよく見えない。

(また影利さんかな……?)

 かずみは暗がりに、じっと目を凝らす。
 廊下が一瞬雷で明るく光った。

 ——ゴロゴロ

「ひっ!」

 かずみは向こうから歩いて来るものを見て、思わず息を呑んだ。
 そこには、髪の長い女が、全身から血を流しながら、ヒタヒタとこちらへ近づいて来ていたのだ。

 かずみは身体中の震えを必死に抑えながら、階段へ走ろうとした。
 その瞬間、女は長い髪を振り乱して、かずみに飛びかかってきた。

「きゃぁあぁあ!」

 かずみは鋭い悲鳴を上げて、尻餅をついた。
 女が耳元で囁く。

(……お願い……言わないで……)

 女はそれだけ言い残すと、スッと消えてしまった。
 かずみはガタガタと震え、半泣きの状態で尻餅をついたまま固まっている。

 そのとき、今度は背後から足音が響いてきた。