よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 ——小雨は妙なものを見ていた。

 いや、見ていたと言うより、その光景が頭の中へ流れ込んできたのだ。

 小雨は右横に崖が広がる、険しい山道を歩いていた。
 雨上がりなのだろう、濡れていて足場が非常に悪い。
 不意に小雨は泥に足を取られ、真っ逆さまに崖の下へと転がり落ちていった。

 小雨は鋭い悲鳴を上げて、はっと我に返った。

「小雨、小雨! 大丈夫?」

 そこには、来華が青ざめた顔をして、自分の顔を覗き込んでいた。

「ら、来華?」

 小雨は一瞬状況が呑み込めずに戸惑う。
 来華はガバッと彼女を抱きしめると、心配そうに早口でこう言った。

「小雨! 良かった。一体どうしたの? 急に泣き出すし、悲鳴は上げるし……」

「え……? アタシ……?」

 小雨は茫然と、今起きたことを思い返していた……。