よろづーこれは、かつて人々によって穢され、見捨てられた、もうひとつの世界のお話ー

 海刃はいつの間にか、影利の寝床まで占領してぐっすりと眠っていた。

 しかし不意に寒気がし、ぶるっと震えてぼんやりと目を覚ました。

「うう~ん?」

 寝ぼけたまま上半身を起こし、暗い辺りを見回す。

(?……あっれ? おれ、なんで影利さんのところで寝て……?)

「影利さん?」

 海刃は影利を探しながら、布団にくるまったままもそもそと自分の場所へ戻った。
 が、すぐにとろんとした表情へと戻る。

「ま、いっか」

 そう言うと、再びパタリと敷布団の上に横になった。
 しかしそのとき、どこからともなく女のくぐもった泣き声が聞こえてきた。

「!」

 眠気が吹っ飛んで、ガバッと起き上がる。

「なっ! だ、誰だ?」

 布団から這い出ると、彼は声が聞こえてくる古い掛軸へそっと近寄った。
 
 恐る恐る掛軸に手を伸ばす……。

「おわぁあぁあ!」

 海刃が掛軸に触れようとした瞬間、そこから大量の赤黒い血がドロリと滲み出てきたのだ。
 そのとき、影利が慌てて部屋へ入ってきた。

「オイ! 大丈夫か?」

「うわああ!」

 海刃は彼にさえ驚いて叫び声を上げたが、影利とわかるとその足にガバッと縋りついた。

「影利さぁん! どこ行ってたんだよぉぉ!」

 影利は困り果てた顔で海刃を引き剥がし、しゃがみ込みながら声をかけた。

「オイ、しっかりしろ! なにがあったんだ?」

 かずみと来華と小雨の三人も、急いで部屋へ入って来る。