「それは……」
どういう意味ですか、と問いたかったけれど、その先は喉の奥に詰まり、掠れた吐息だけがまろび出る。意図を理解したくなくて、というより、彼女の暗に含んだ部分が何となく察せられて。勘のようなもの、と言えば良いのだろうか。しかしそれさえも、彼女の狙い通りのような気がしてならなかった。
「“眠り桜”を咲かせた者には褒賞がある……というのは、ご存知かしら」
ゆっくりと千代から顔を離しながら、女は肩に垂れた蘇芳色の髪の毛を一房、指先で軽く払う。そうして、隣で朱天と話し込んでいる夜彌へ、視線を流した。熱を帯びた、陶然とした眼差し。ただそれだけで、千代は理解してしまった。理解したくなどなかったけれど。目の当たりにしてしまえばもう、そうせざるを得なかった。
もしかしたら、否、間違いなく彼女は――。
ぽたりと、胸の奥に沈む澱へ、黒々とした何かが滴り落ちる。次から次へ、ぽたり、ぽたり、と。その度に、心がどんどん冷えてゆくのを感じる。それは少しずつ四肢を蝕んでゆき、指先を微かに震わせた。何も言えない。言い返したいのに、言葉が何ひとつ思い浮かんでこない。
そんな千代の心境を見透かしたかのように、女は真っ赤な唇をにやりと歪め、ころころと嗤った。愛らしく、無邪気そうな、けれども紛れもなく嘲りを秘めた、棘のある軽やかな声。
ざわつきの波を渡るようにして太鼓の音が鳴り響き、それに気付いた夜彌が、朱天との会話を終わらせて振り返る。それを、横顔に向けられるやわらかな視線で感じ取ったものの、しかし千代には何もすることが出来なかった。口を開くことも、彼の眼差しに応えることも、何ひとつ。
「どうかしたのか?」
張り詰めた表情で立ち尽くしていたからか、不審に思ったらしい夜彌が腰を屈め、訝しげな顔で覗き込んでくる。急に視界を埋め尽くした端整なかんばせに、正直にも心臓がどくりと跳ね上がり、その勢いで押し出された息が漸く、細く開いた唇の間からこぼれ落ちた。それでもまだ、息苦しくてたまらない。胸を、目に見えない手で、ぎゅっと握り締められているような感覚がする。
「い、いえ……何でもありません」
そう返しながらどうにか微笑み、千代は逃げるようにして夜彌から視線を逸らした。そんなふたりのもとへ、まるで頃合いを見計らったかのように、小さな女の子がぱたぱたと駆け寄ってきた。黒いおかっぱ頭、赤い小袖、その上に重ねられた薄桜色のちゃんちゃんこ。案内係だという彼女に助け舟を出されたような心地で、千代はほっと胸を撫で下ろした。夜彌は腑に落ちたふうではなかったけれど、それでも深追いをしてくることはなく、女の子――恐らくは座敷童――の後に続いて、大人しく上座へと向かう。
そんな彼の後ろを歩みながら、千代はちらりと、肩越しに女を一瞥する。どうやら朱天の娘であるらしく、彼女は大きな父の隣を、凛と背筋を伸ばして歩いていた。千代の視線に気付いているのか、いないのか、それは分からないけれど。彼女の纏う空気は他のどのあやかしよりも洗練され、神々しい気品に満ち溢れていた。淑やかに歩く、その後ろ姿でさえ。
女の子に連れてゆかれた席に腰を下ろしながら、ふと、千代は初めて夜彌と会った時のことを思い出す。“花嫁”選びをしていたという、あの日。彼は辟易するほどの候補者と顔を合わせたようだったけれど――葛ノ葉の列挙した者たちの中に、確か“鬼の娘”も含まれてはいなかっただろうか。河童の娘や天狗の娘たちとともに。葛ノ葉は、その娘が誰なのか、名を挙げることはなかったけれど、それでも不思議と、その“鬼の娘”が彼女であるような気がしてならなかった。殆ど確信に近く。
考えれば考えるほど、胸の中に暗雲が立ち込める。けれども、千代ひとりの憂いなどまるで関係なく、桜花の宴は、夜彌の軽い挨拶と、それに続く楽器の付喪神たちが奏でる雅やかな調べとともに、五十年の時を経て遂に幕を開けた――。
▽
蒼穹に響き渡る太鼓や笛、三味線の音色を聞きながら、千代はそっと頭上を仰ぐ。天を覆うほど伸びた大小様々な枝々。縦横無尽に伸びるそれらは、ただ枝としてそこにあるだけで、蕾をつけるどころか花を咲かせる気配すら一向に感じられない。それがもう、幾刻も続いていた。
複雑な色の重ねが美しい唐衣裳を纏った青女房、しっとりと水を含んだ髪を垂らした濡女、後頭部に開いたもうひとつの口で今様を唄う二口女、金糸の刺繍がふんだんにあしらわれた華やかな着物と幾本もの簪が目を引く骨女、神楽鈴を巧みに操り余韻嫋嫋として魅了する鈴彦姫。
入れ替わり立ち替わり、様々なあやかしたちが各々の得意とする舞を披露し、緋毛氈を囲む者たちから歓声や拍手があがることはあれど、肝心の桜はいっかな目を覚ますことはなかった。舞を始める時には勝ち誇ったような顔をしていた者さえ、音が途切れた後には愕然とした――時には悲嘆に暮れた――面持ちで、寒々しい桜の枝を見上げながら立ち尽くす様を、もう何度も目にしている。
「次はいよいよ、朱天殿のところの朱音姫ですな」
肩を落として己の席へと戻ってゆく石妖を見送っていると、何処からともなく、酒の熱と高揚を滲ませた男たちの声が聞こえてきた。
「なんせ、妖都一と名高い舞手。今日の真打ちは彼女でしょう」
「殆どの者が、朱音姫の舞を観に来たと言っても過言ではありませんからなあ」
「頑固な“眠り桜”も、彼女の舞をひと目見れば、花を咲かせずにはおれんのでは」
「彼女でも咲かせられぬのなら、他の誰にも眠りを覚ますことなど出来まい」
口々にそう言い合い、けたけたと笑う嗄れた声を耳にしながら、千代は朱音へと視線を転じる。朱音は悠然とした歩みで緋毛氈の真ん中まで来ると、静かに足を止め、そうしてたおやかな仕草で、正面に座る夜彌を真っ直ぐに見据えた。くっきりとした目尻に差された朱色が、彼女の美貌に艶やかな華を添え、玲瓏とした翡翠の瞳は、燦々と降り注ぐ陽光を浴びて光り輝いているように見える。同性の千代でさえ思わず息を呑むほどの、類稀な麗しさ。そこここから感嘆の息が漏れ、中には恍惚とした表情で眺めている者さえいる。
けれど、そのどれにも反応することなく、それどころか“眠り桜”すら一瞥もせず、彼女――朱音はただただ夜彌だけを見つめていた。まるでこれから、桜の為ではなく貴方の為に舞います、とでも告げるかのように。意志の強い、自信に満ち溢れた瞳。
嫌な胸騒ぎがして、千代はそろりと、隣に座る夜彌の横顔を盗み見る。あんな眼差しを向けられては、さすがの彼も目を奪われてしまうのではないだろうか。目だけではなく、もしかしたら心までも――。しかし、夜彌は組んだ足に頬杖をついて朱音へ目を向けてこそいるものの、そのかんばせは心做しか倦んでいた。そもそも、本当に彼女を見ているのかどうかさえ、定かでない。
そのことに、嬉しさのような、安堵のような、兎も角胸の奥がぽうっと明るく、あたたかくなるのを覚えながら、千代は夜彌からそっと視線を外した。少なくとも、緋毛氈を囲む他のあやかしたちのように、朱音に見惚れてはいない――。
けれど、これは優越感というものなのだろうか。そう思い至ると、なんだか自分が浅ましく、狡く感じられ、千代は深く恥じ入った。そもそも夜彌が自分を選んだのは、殆ど偶然に過ぎないというのに。
ゆっくりとひとつ瞬いて、千代は帯に差していた扇子を手に取る朱音の、凛とした姿を見遣る。彼女は伴奏に三味線を選んだ。舞手は、幾つかある楽器の中から好きなものを選ぶことが出来る。鼓と笛を揃える者もいれば、箏だけを望む者もいるといった具合に、誰もが己の得手とする舞に合わせて決めるのだ。
三味線の付喪神は朱音を一瞥した後、すうっと目を閉じ、流れるような撥捌きで糸を弾く。張り詰めた場に、高く軽やかな音が響き渡り、澄んだ空気を震わせる。刹那、朱音は赤く塗られた指先で扇子を滑らかに開き、それをひらひらと、まるで桜の花びらが舞い散るように揺らしながら、その場でくるりと身を翻す。
そのしなやかな身のこなしに、千代は忽ち目を瞠る。彼女の、頭の先から四肢の先に至るまで洗練された優美な動きは、嘗て都で高い人気を誇るほどの舞の名手だったという母の華麗な所作に、殆ど重なって見えた。とても真似なんて出来ない、と、千代が何度も何度も痛感し、その度に憧れた、あの舞姿に。
もし――。三味線の音に合わせて優雅に舞う朱音を呆然と眺めながら、千代は思う。もし、彼女の舞によって“眠り桜”が目を覚ましたとしたら。そして彼女が、褒賞として夜彌の傍を望んだとしたら――彼は一体、何と答えるのだろう。
やさしい笑みも、朗らかな、時に熱を帯びる真っ直ぐな眼差しも。何もかも全て、彼女へ向けられるようになってしまうのだろうか――。
どういう意味ですか、と問いたかったけれど、その先は喉の奥に詰まり、掠れた吐息だけがまろび出る。意図を理解したくなくて、というより、彼女の暗に含んだ部分が何となく察せられて。勘のようなもの、と言えば良いのだろうか。しかしそれさえも、彼女の狙い通りのような気がしてならなかった。
「“眠り桜”を咲かせた者には褒賞がある……というのは、ご存知かしら」
ゆっくりと千代から顔を離しながら、女は肩に垂れた蘇芳色の髪の毛を一房、指先で軽く払う。そうして、隣で朱天と話し込んでいる夜彌へ、視線を流した。熱を帯びた、陶然とした眼差し。ただそれだけで、千代は理解してしまった。理解したくなどなかったけれど。目の当たりにしてしまえばもう、そうせざるを得なかった。
もしかしたら、否、間違いなく彼女は――。
ぽたりと、胸の奥に沈む澱へ、黒々とした何かが滴り落ちる。次から次へ、ぽたり、ぽたり、と。その度に、心がどんどん冷えてゆくのを感じる。それは少しずつ四肢を蝕んでゆき、指先を微かに震わせた。何も言えない。言い返したいのに、言葉が何ひとつ思い浮かんでこない。
そんな千代の心境を見透かしたかのように、女は真っ赤な唇をにやりと歪め、ころころと嗤った。愛らしく、無邪気そうな、けれども紛れもなく嘲りを秘めた、棘のある軽やかな声。
ざわつきの波を渡るようにして太鼓の音が鳴り響き、それに気付いた夜彌が、朱天との会話を終わらせて振り返る。それを、横顔に向けられるやわらかな視線で感じ取ったものの、しかし千代には何もすることが出来なかった。口を開くことも、彼の眼差しに応えることも、何ひとつ。
「どうかしたのか?」
張り詰めた表情で立ち尽くしていたからか、不審に思ったらしい夜彌が腰を屈め、訝しげな顔で覗き込んでくる。急に視界を埋め尽くした端整なかんばせに、正直にも心臓がどくりと跳ね上がり、その勢いで押し出された息が漸く、細く開いた唇の間からこぼれ落ちた。それでもまだ、息苦しくてたまらない。胸を、目に見えない手で、ぎゅっと握り締められているような感覚がする。
「い、いえ……何でもありません」
そう返しながらどうにか微笑み、千代は逃げるようにして夜彌から視線を逸らした。そんなふたりのもとへ、まるで頃合いを見計らったかのように、小さな女の子がぱたぱたと駆け寄ってきた。黒いおかっぱ頭、赤い小袖、その上に重ねられた薄桜色のちゃんちゃんこ。案内係だという彼女に助け舟を出されたような心地で、千代はほっと胸を撫で下ろした。夜彌は腑に落ちたふうではなかったけれど、それでも深追いをしてくることはなく、女の子――恐らくは座敷童――の後に続いて、大人しく上座へと向かう。
そんな彼の後ろを歩みながら、千代はちらりと、肩越しに女を一瞥する。どうやら朱天の娘であるらしく、彼女は大きな父の隣を、凛と背筋を伸ばして歩いていた。千代の視線に気付いているのか、いないのか、それは分からないけれど。彼女の纏う空気は他のどのあやかしよりも洗練され、神々しい気品に満ち溢れていた。淑やかに歩く、その後ろ姿でさえ。
女の子に連れてゆかれた席に腰を下ろしながら、ふと、千代は初めて夜彌と会った時のことを思い出す。“花嫁”選びをしていたという、あの日。彼は辟易するほどの候補者と顔を合わせたようだったけれど――葛ノ葉の列挙した者たちの中に、確か“鬼の娘”も含まれてはいなかっただろうか。河童の娘や天狗の娘たちとともに。葛ノ葉は、その娘が誰なのか、名を挙げることはなかったけれど、それでも不思議と、その“鬼の娘”が彼女であるような気がしてならなかった。殆ど確信に近く。
考えれば考えるほど、胸の中に暗雲が立ち込める。けれども、千代ひとりの憂いなどまるで関係なく、桜花の宴は、夜彌の軽い挨拶と、それに続く楽器の付喪神たちが奏でる雅やかな調べとともに、五十年の時を経て遂に幕を開けた――。
▽
蒼穹に響き渡る太鼓や笛、三味線の音色を聞きながら、千代はそっと頭上を仰ぐ。天を覆うほど伸びた大小様々な枝々。縦横無尽に伸びるそれらは、ただ枝としてそこにあるだけで、蕾をつけるどころか花を咲かせる気配すら一向に感じられない。それがもう、幾刻も続いていた。
複雑な色の重ねが美しい唐衣裳を纏った青女房、しっとりと水を含んだ髪を垂らした濡女、後頭部に開いたもうひとつの口で今様を唄う二口女、金糸の刺繍がふんだんにあしらわれた華やかな着物と幾本もの簪が目を引く骨女、神楽鈴を巧みに操り余韻嫋嫋として魅了する鈴彦姫。
入れ替わり立ち替わり、様々なあやかしたちが各々の得意とする舞を披露し、緋毛氈を囲む者たちから歓声や拍手があがることはあれど、肝心の桜はいっかな目を覚ますことはなかった。舞を始める時には勝ち誇ったような顔をしていた者さえ、音が途切れた後には愕然とした――時には悲嘆に暮れた――面持ちで、寒々しい桜の枝を見上げながら立ち尽くす様を、もう何度も目にしている。
「次はいよいよ、朱天殿のところの朱音姫ですな」
肩を落として己の席へと戻ってゆく石妖を見送っていると、何処からともなく、酒の熱と高揚を滲ませた男たちの声が聞こえてきた。
「なんせ、妖都一と名高い舞手。今日の真打ちは彼女でしょう」
「殆どの者が、朱音姫の舞を観に来たと言っても過言ではありませんからなあ」
「頑固な“眠り桜”も、彼女の舞をひと目見れば、花を咲かせずにはおれんのでは」
「彼女でも咲かせられぬのなら、他の誰にも眠りを覚ますことなど出来まい」
口々にそう言い合い、けたけたと笑う嗄れた声を耳にしながら、千代は朱音へと視線を転じる。朱音は悠然とした歩みで緋毛氈の真ん中まで来ると、静かに足を止め、そうしてたおやかな仕草で、正面に座る夜彌を真っ直ぐに見据えた。くっきりとした目尻に差された朱色が、彼女の美貌に艶やかな華を添え、玲瓏とした翡翠の瞳は、燦々と降り注ぐ陽光を浴びて光り輝いているように見える。同性の千代でさえ思わず息を呑むほどの、類稀な麗しさ。そこここから感嘆の息が漏れ、中には恍惚とした表情で眺めている者さえいる。
けれど、そのどれにも反応することなく、それどころか“眠り桜”すら一瞥もせず、彼女――朱音はただただ夜彌だけを見つめていた。まるでこれから、桜の為ではなく貴方の為に舞います、とでも告げるかのように。意志の強い、自信に満ち溢れた瞳。
嫌な胸騒ぎがして、千代はそろりと、隣に座る夜彌の横顔を盗み見る。あんな眼差しを向けられては、さすがの彼も目を奪われてしまうのではないだろうか。目だけではなく、もしかしたら心までも――。しかし、夜彌は組んだ足に頬杖をついて朱音へ目を向けてこそいるものの、そのかんばせは心做しか倦んでいた。そもそも、本当に彼女を見ているのかどうかさえ、定かでない。
そのことに、嬉しさのような、安堵のような、兎も角胸の奥がぽうっと明るく、あたたかくなるのを覚えながら、千代は夜彌からそっと視線を外した。少なくとも、緋毛氈を囲む他のあやかしたちのように、朱音に見惚れてはいない――。
けれど、これは優越感というものなのだろうか。そう思い至ると、なんだか自分が浅ましく、狡く感じられ、千代は深く恥じ入った。そもそも夜彌が自分を選んだのは、殆ど偶然に過ぎないというのに。
ゆっくりとひとつ瞬いて、千代は帯に差していた扇子を手に取る朱音の、凛とした姿を見遣る。彼女は伴奏に三味線を選んだ。舞手は、幾つかある楽器の中から好きなものを選ぶことが出来る。鼓と笛を揃える者もいれば、箏だけを望む者もいるといった具合に、誰もが己の得手とする舞に合わせて決めるのだ。
三味線の付喪神は朱音を一瞥した後、すうっと目を閉じ、流れるような撥捌きで糸を弾く。張り詰めた場に、高く軽やかな音が響き渡り、澄んだ空気を震わせる。刹那、朱音は赤く塗られた指先で扇子を滑らかに開き、それをひらひらと、まるで桜の花びらが舞い散るように揺らしながら、その場でくるりと身を翻す。
そのしなやかな身のこなしに、千代は忽ち目を瞠る。彼女の、頭の先から四肢の先に至るまで洗練された優美な動きは、嘗て都で高い人気を誇るほどの舞の名手だったという母の華麗な所作に、殆ど重なって見えた。とても真似なんて出来ない、と、千代が何度も何度も痛感し、その度に憧れた、あの舞姿に。
もし――。三味線の音に合わせて優雅に舞う朱音を呆然と眺めながら、千代は思う。もし、彼女の舞によって“眠り桜”が目を覚ましたとしたら。そして彼女が、褒賞として夜彌の傍を望んだとしたら――彼は一体、何と答えるのだろう。
やさしい笑みも、朗らかな、時に熱を帯びる真っ直ぐな眼差しも。何もかも全て、彼女へ向けられるようになってしまうのだろうか――。



