透明に堕ちるわたしの輪郭

 私は、高校二年には進学せず学校を去ることを決めた。それを鮎人に告げた時は、初めて声を荒らげられた。確かあれは、路花の家のすぐ傍にある防波堤の辺りだったと思う。

「なんでだよ……なんでお前が学校を辞めんだよ。好きなんだろ? 路花のことが好きなら諦めずに最後まで向き合ってやれよっ!!」

 最もな意見だとは思った。でも私だって、私にしか出来ない考えの元、この数ヶ月覚悟を持ってやってきたのだ。

「何が分かんだよ……お前になにが分かんだよ」

 気付いた時には爪の間に肉がくい込む程に手を握りしめていた。

「お前はいいよな。だって、路花の頭のなかにちゃんと残ってるもんな? 私だってこの数ヶ月ずっと支えてきた。食事と睡眠以外の時間を全部路花の事で頭をいっぱいにして、どんなに疲れてようと路花の前では明るくいたよ! 必死に支えたよ!でも、私は残らなかった。好きだった人の頭の中から自分の存在ごと抹消された辛さ分かる? ねえ、分かる? 結局私は、なにも出来なかった。なんの力にもなれなかった。私のことなんて路花はもう覚えてないからさ、このまま目の前から消えるよ。滅茶苦茶な理屈だって事は分かってるけど、こうなったからにはあんたが死ぬ気で路花を支えて! あんたまで路花から離れたら私は絶対に許さないから」

 そう吐き捨てて私は踵を返した。防波堤の更に向こう、海に溶け落ちるように沈んでいく夕日のひかりが眩しくて、もう随分前から溢れていた涙がより溢れた。