高校に入学したら何かが変わるかもと一瞬でも思わなかったと言えば嘘になる。正直、少し期待した。他の子たちと同じようにこの世界で生きる喜びや希望を抱けるかもって。でも、現実は残酷で、高校に入学してからもいじめは始まった。僕に傷をつける人間が変わっただけだった。
僕はひとりだった。クラスで、学年でただひとり。心を休める場所があれば良かったけれど、その頃には僕と弟の人生は大差で離されていて、両親の扱いも分かりやすいくらいにひどいものになった。家のなかで会えば、弟にはゴミをみるようなで目でみられた。
「髪、切れよ。見た目めちゃくちゃ気持ち悪いよ姉ちゃん」
それだけ言うと、弟は部屋に戻っていった。廊下にひとり取り残され乾いた笑いが漏れた。あははって、声を出して笑ってしまう。両親は僕の容姿が悪いと言った。見栄えが悪い、輝きが足りない。うつくしくない。弟は、気持ちが悪いと言った。部屋に戻り、ふと思う。じゃあお前らはどうなんだよ。特別? 見た目? 芸能人に言われならまだしも、お前らみたいは一般人に言われる筋合いなんてないんだよ。特別。そんな存在になれるのは端から一握りの存在だけだ。自惚れんなよ、ただの一般人が。所詮は僕と同じじゃないか。
翌日学校に行くと、またあまったるい匂いがした。〇〇ちゃんが紹介してたリップ買ったのー。えーいいなあ、良かったら教えてよ。私も買う。聞きたくもないのに、そんな会話が聴こえてくる。短いスカート。細い足。スタイル。顔、肌、髪型、髪質。全て極めたら特別なのか。容姿がいい人が偉いのか。周りを見渡せば、男子も女子も色めき立っている奴らばかりだ。一生自惚れてろよって思う。お前なんか、お前らなんか特別じゃない。膨れ上がった感情が、ついに内側から破裂した。
気付いたら机を蹴り上げていた。引き出しから教材が落ち、凄まじい音が鳴る。えっ、なに? とクラスメイト達がみてくる。キモいんだけど。何急にキレてんの。もしかして私らにやった? 今の。
一瞬で女子たちに囲まれた。僕は椅子に座ったままそいつらを睨みつけた。「ねえ、やめなって」と声がしたのはそんな時だった。どこの馬鹿が僕のことなんて助けるんだ、と純粋な疑問が湧き立ち振り返る。雪みたいに白い肌にちいさな顔、目鼻立ちがくっきりとしたうつくしい女の子。彼女が眉間に皺を寄せ、身を挺して僕を庇ってくれていた。その時僕は呆気に取られ、ぼんやりと彼女の後姿をみていた。意外だった。君も、そっち側だと思っていたのに。だって君はこのクラスの誰よりもうつくしい、と思いかけ、ふいに彼女の名前が爆ぜたみたいに頭のなかで広がった。彼女の名は、美藤路花。僕と彼女が友達になったのは、彼女が今の彼女になってしまうずっと前だった。
僕はひとりだった。クラスで、学年でただひとり。心を休める場所があれば良かったけれど、その頃には僕と弟の人生は大差で離されていて、両親の扱いも分かりやすいくらいにひどいものになった。家のなかで会えば、弟にはゴミをみるようなで目でみられた。
「髪、切れよ。見た目めちゃくちゃ気持ち悪いよ姉ちゃん」
それだけ言うと、弟は部屋に戻っていった。廊下にひとり取り残され乾いた笑いが漏れた。あははって、声を出して笑ってしまう。両親は僕の容姿が悪いと言った。見栄えが悪い、輝きが足りない。うつくしくない。弟は、気持ちが悪いと言った。部屋に戻り、ふと思う。じゃあお前らはどうなんだよ。特別? 見た目? 芸能人に言われならまだしも、お前らみたいは一般人に言われる筋合いなんてないんだよ。特別。そんな存在になれるのは端から一握りの存在だけだ。自惚れんなよ、ただの一般人が。所詮は僕と同じじゃないか。
翌日学校に行くと、またあまったるい匂いがした。〇〇ちゃんが紹介してたリップ買ったのー。えーいいなあ、良かったら教えてよ。私も買う。聞きたくもないのに、そんな会話が聴こえてくる。短いスカート。細い足。スタイル。顔、肌、髪型、髪質。全て極めたら特別なのか。容姿がいい人が偉いのか。周りを見渡せば、男子も女子も色めき立っている奴らばかりだ。一生自惚れてろよって思う。お前なんか、お前らなんか特別じゃない。膨れ上がった感情が、ついに内側から破裂した。
気付いたら机を蹴り上げていた。引き出しから教材が落ち、凄まじい音が鳴る。えっ、なに? とクラスメイト達がみてくる。キモいんだけど。何急にキレてんの。もしかして私らにやった? 今の。
一瞬で女子たちに囲まれた。僕は椅子に座ったままそいつらを睨みつけた。「ねえ、やめなって」と声がしたのはそんな時だった。どこの馬鹿が僕のことなんて助けるんだ、と純粋な疑問が湧き立ち振り返る。雪みたいに白い肌にちいさな顔、目鼻立ちがくっきりとしたうつくしい女の子。彼女が眉間に皺を寄せ、身を挺して僕を庇ってくれていた。その時僕は呆気に取られ、ぼんやりと彼女の後姿をみていた。意外だった。君も、そっち側だと思っていたのに。だって君はこのクラスの誰よりもうつくしい、と思いかけ、ふいに彼女の名前が爆ぜたみたいに頭のなかで広がった。彼女の名は、美藤路花。僕と彼女が友達になったのは、彼女が今の彼女になってしまうずっと前だった。
