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ぼくは、生まれた時からお姉ちゃんの影でした。年が七つも離れているので、ぼくが生まれた頃にはお姉ちゃんは家族のなかのでも重要な要素のひとつでした。太陽を中心にくるくるまわる惑星みたいに、ぼくたちは軸となるお姉ちゃんの外側にいて、お姉ちゃんの天使のような柔らかい笑顔と空気感はぼくたち家族のひかりでもありました。
ぼくは弟だからそれはやっぱり皆から可愛がってはもらいましたが、やはりこの物語での主人公は僕ではなくお姉ちゃんなのだと、物心ついた頃には気づいていたように思います。それ程までにお姉ちゃんは魅力的な人間でした。誰かを悪く言ったりすることは無く、むしろ最上の愛を皆に与えました。よく笑い、その笑顔や明るさに救われた人たちも大勢いたと思います。
ぼくは常にお姉ちゃんの後ろをついて回り、ありとあらゆる障壁から身を守ってもらっていました。家のなかにあったお菓子を隠れて食べた時も、親戚からお年玉を貰ったのにも関わらず恥ずかしくてお礼が言えない時も、ぼくはお姉ちゃんの小指をいつも掴み、影として同化していました。自分のちからではどうにも出来ないから助けを求めていました。情けないのです。涙が、溢れそうです。でも、それがぼくなのです。
お姉ちゃんは怒りませんでした。いいよ、お姉ちゃんが守ってあげると笑いかけてくれました。お父さんはそんなぼくを可愛がってくれました。お母さんは、そんなぼくを愛してくれました。
なのにぼくは、二人がこの世から消え去った時、愛していたはずなのに二人の手を離しました。もしかしたら、一度はぼくも死んだのかもしれません。けれど、今こうして文章を書けているのだから、ぼくはやっぱりあの日のあの瞬間、二人の手を離したのだと思います。
今でも目に浮かびます。二人の身体が原型を失い肉のかたまりになっていたこと、空が怖いくらいに綺麗で青かったこと、そしてお姉ちゃんが泣き叫んでいたこと、全て、全て覚えています。
これから書き残すのは、ぼくがぼくとして生きた、地球上に残す最期の言葉です。
この文章をだれかが読むとき、恐らくぼくは、いや間違いなくこの世にいないでしょう。
どうかあなたが、この世で生きるに値する人間であることを祈ります。
ぼくは、生まれた時からお姉ちゃんの影でした。年が七つも離れているので、ぼくが生まれた頃にはお姉ちゃんは家族のなかのでも重要な要素のひとつでした。太陽を中心にくるくるまわる惑星みたいに、ぼくたちは軸となるお姉ちゃんの外側にいて、お姉ちゃんの天使のような柔らかい笑顔と空気感はぼくたち家族のひかりでもありました。
ぼくは弟だからそれはやっぱり皆から可愛がってはもらいましたが、やはりこの物語での主人公は僕ではなくお姉ちゃんなのだと、物心ついた頃には気づいていたように思います。それ程までにお姉ちゃんは魅力的な人間でした。誰かを悪く言ったりすることは無く、むしろ最上の愛を皆に与えました。よく笑い、その笑顔や明るさに救われた人たちも大勢いたと思います。
ぼくは常にお姉ちゃんの後ろをついて回り、ありとあらゆる障壁から身を守ってもらっていました。家のなかにあったお菓子を隠れて食べた時も、親戚からお年玉を貰ったのにも関わらず恥ずかしくてお礼が言えない時も、ぼくはお姉ちゃんの小指をいつも掴み、影として同化していました。自分のちからではどうにも出来ないから助けを求めていました。情けないのです。涙が、溢れそうです。でも、それがぼくなのです。
お姉ちゃんは怒りませんでした。いいよ、お姉ちゃんが守ってあげると笑いかけてくれました。お父さんはそんなぼくを可愛がってくれました。お母さんは、そんなぼくを愛してくれました。
なのにぼくは、二人がこの世から消え去った時、愛していたはずなのに二人の手を離しました。もしかしたら、一度はぼくも死んだのかもしれません。けれど、今こうして文章を書けているのだから、ぼくはやっぱりあの日のあの瞬間、二人の手を離したのだと思います。
今でも目に浮かびます。二人の身体が原型を失い肉のかたまりになっていたこと、空が怖いくらいに綺麗で青かったこと、そしてお姉ちゃんが泣き叫んでいたこと、全て、全て覚えています。
これから書き残すのは、ぼくがぼくとして生きた、地球上に残す最期の言葉です。
この文章をだれかが読むとき、恐らくぼくは、いや間違いなくこの世にいないでしょう。
どうかあなたが、この世で生きるに値する人間であることを祈ります。
