夜の八時。
駅の手前にある、普段は誰もいない小さな児童公園。
錆びついたブランコが夜風に小さく揺れているだけの薄暗い敷地へ、俺は自分の高校のサッカー部ジャージを羽織り、伊達メガネもかけず、前髪もセットしない剥き出しの十七歳の姿のまま足を踏み入れた。
常夜灯の下で待ち受けていると、カサリ、と静かな足音がして、暗闇からクリーム色のパンプスの先が映った。
オフィスカジュアルのロングスカートの裾を揺らし、ポケットに両手を突っ込んだまま、結衣さんがゆっくりと歩み寄ってくる。髪をきっちりと結んだその顔は、教壇に立つ、あの凛とした『佐倉先生』の顔そのものだった。
「結衣さん……」
まずは来てくれたことに少しだけホッとした。
「こんばんは、航平くん。話したいことって、なに?」
振り返った結衣さんの瞳は、街灯の光を反射して、どこか酷く静かだった。
その真っ直ぐな視線に、俺の理性が、防衛線が、一瞬で決壊した。
「ごめんなさい。俺、あなたに、最悪な大嘘をついていました」
喉の奥が引き裂かれそうになりながら、俺は一文字ずつ、自分の罪を吐き出した。
「経済学部の大学生なんかじゃありません。サークルのサッカーじゃなくて、ただサッカーをしている十七歳の、現役の高校生です。未成年飲酒なんて法律を破る勇気もないくせに、あなたに近づきたくて、毎週金曜日の夜、駅の公衆便所に駆け込んで必死に着替えて、下戸の大学生っていう最低な言い訳を用意して、あの店に通っていました…あのバーで着ていた服も、メガネも、全部、あなたを騙すための変装です」
俺はグッと深く頭を下げた。
振られる。軽蔑される。恋人としての魔法が、この瞬間にすべて終わる。
駅の手前にある、普段は誰もいない小さな児童公園。
錆びついたブランコが夜風に小さく揺れているだけの薄暗い敷地へ、俺は自分の高校のサッカー部ジャージを羽織り、伊達メガネもかけず、前髪もセットしない剥き出しの十七歳の姿のまま足を踏み入れた。
常夜灯の下で待ち受けていると、カサリ、と静かな足音がして、暗闇からクリーム色のパンプスの先が映った。
オフィスカジュアルのロングスカートの裾を揺らし、ポケットに両手を突っ込んだまま、結衣さんがゆっくりと歩み寄ってくる。髪をきっちりと結んだその顔は、教壇に立つ、あの凛とした『佐倉先生』の顔そのものだった。
「結衣さん……」
まずは来てくれたことに少しだけホッとした。
「こんばんは、航平くん。話したいことって、なに?」
振り返った結衣さんの瞳は、街灯の光を反射して、どこか酷く静かだった。
その真っ直ぐな視線に、俺の理性が、防衛線が、一瞬で決壊した。
「ごめんなさい。俺、あなたに、最悪な大嘘をついていました」
喉の奥が引き裂かれそうになりながら、俺は一文字ずつ、自分の罪を吐き出した。
「経済学部の大学生なんかじゃありません。サークルのサッカーじゃなくて、ただサッカーをしている十七歳の、現役の高校生です。未成年飲酒なんて法律を破る勇気もないくせに、あなたに近づきたくて、毎週金曜日の夜、駅の公衆便所に駆け込んで必死に着替えて、下戸の大学生っていう最低な言い訳を用意して、あの店に通っていました…あのバーで着ていた服も、メガネも、全部、あなたを騙すための変装です」
俺はグッと深く頭を下げた。
振られる。軽蔑される。恋人としての魔法が、この瞬間にすべて終わる。


