放課後のジントニック、美術室の魔法

「なーんだ、そうだったんだ……! 二人でずっと何か隠してるみたいで、私の知らないところでコソコソ男同士の秘密基地作ってるみたいで、それもすごく寂しかったのに! なんだよ、女の人の、しかも『先生』に会いに行くための変装の相談だったわけ!? あいつ、私にはあんなに素っ気ないくせに、航平のそんな大掛かりな恋の作戦にはノリノリだったんだ……」
夏海はがっくりと肩を落とし、少しだけ悔しそうに口を尖らせた。それから、ハッとしたように俺を見た。
「……じゃあさ。先週、私が急に大人っぽいサマーニット着てきたとき、あんたに突っ込まれて私、何て言ったか覚えてる?」
「え? 『航平が急に大人っぽくなった気がしたから、私だけ子供っぽいのが嫌だった』って……」
「……っ!」
夏海は一瞬で耳の裏まで真っ赤に染め上げると、今度は大慌てで俺の口を両手で塞いできた。
「バカ! 声が大きい! 忘れてそれ!」
「ぶはっ……! 苦しいって、夏海。ってことは、あれも全部……」
「そうだよ! 大輝に変に子供っぽいって思われたくなくて、ちょっと背伸びして着てみたの! でも、あんたに突っ込まれたから、恥ずかしくてとっさに『航平のせい』にして誤魔化しただけ! あんたが急にジャージ以外の服とか着始めるから、ちょうどいい言い訳になっちゃったの!」
夏海は恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうなほど真っ赤になって俺をポカポカと叩いた。
「なのに、あんた一人でそんな壮大な勘違いしてたわけ!? あーあ、びっくりした。でも……」
夏海はふぅ、と大きく息を吐くと、再びニヤリと悪魔のような笑顔を浮かべて、一歩俺に近づいてきた。
「ねぇ、航平」
「な、なんだよ……」
「お互いに、絶対にバラせない秘密ができちゃったね」
夏海は俺の前に立ち、スクールバッグを後ろに回して、じっと俺の目を覗き込んできた。
「大輝がもう知ってるなら、大輝には内緒のままでいいよ。あいつ、私が大輝のこと好きだって知ったら、絶対変に意識して逃げるか、気まずい顔するに決まってるもん。だから、大輝には『夏海には全部バレたけど、三人組が壊れるのを寂しがってたから協力してもらうことになった』ってことにしておいて。私と航平の二人の間だけで、こっそり大輝を巻き込む作戦を立てるの」