放課後のジントニック、美術室の魔法

結衣さんが驚いたように目を丸くする。俺はハッとして、慌てて「あ、いや! 同じサッカーをやってる身としての想像です。熱くなってやってる奴の気持ちは、なんとなく分かるというか……」と手を振って取り繕った。
結衣さんはしばらくぽかんとしていたが、やがてふっと柔らかく微笑んだ。
「ふふ、そっか。……でもね、その偶然に、私はすごく救われたんだ。航平くんが先週、高校生の本音を教えてくれたのもそう。色んな人に支えられてるなって、改めて思ったの。本当にありがとう」
オレンジ色の夕日が、テラス席のガラスに反射してキラキラと輝いている。
「あ、もうこんな時間。楽しすぎてあっという間だったなぁ。」
結衣さんは名残惜しそうに空になったグラスを見つめ、それから俺を見て、優しく微笑んだ。
「ねぇ、航平くん。また……こうして、土曜日もお出かけして進路相談(仮)に乗ってくれる?」
「はい。喜んで」
俺は小さく頷いた。
嘘をついている罪悪感は、消えることはない。だけど、夕闇に溶けていく彼女の笑顔を見つめながら、俺はこの心地いい魔法が一日でも長く続くことを、ただ強く願っていた。