駅前の噴水広場。人混みの中で手を振る結衣さんの姿をみつけた瞬間、夏海の顔は一瞬で脳裏から吹き飛んだ。
いつものきっちり結んだ『佐倉先生』の髪ではない。肩の上でふんわりと揺れる髪。私服の結衣さんは、柔らかなクリーム色のサマーニットに、風に靡くロングスカートを合わせていた。
夜のバーで見るよりも何倍も眩しくて、綺麗で、俺は一瞬、自分が何者なのか忘れて立ち尽くしてしまった。
「お待たせ、航平くん。……って、どうしたの?ぼーっとして」
「あ、いや……すみません。結衣さん、その、私服がすごく素敵で。いつもと雰囲気が違って、びっくりしました」
ネイビーのカーディガンの襟元を必死に引っ張りながら、どうにか『大学生の余裕』を貼り付けて本音を口にする。すると結衣さんは、ほんのり耳の裏を赤くしてクスッと笑った。
「ふふ、ありがとう。航平くんこそ、夜に会うときと違ってすごく爽やかだね。なんだか新鮮かも」
その一言だけで、心臓の奥がじわじわと熱くなる。夏海に言われるがまま大人っぽいネイビーの服を選んで、本当に良かったと心から思った。
駅から美術館へと続く並木道は、休日を楽しむ家族連れやカップルで賑わっていた。
夜のバーのカウンターなら、適度な暗闇とマスターの存在が俺の防衛線になってくれていた。だけど、遮るもののない昼の太陽光の下、こうして肩が触れ合いそうな距離で隣を歩くというのは、十七歳の俺にとって完全にキャパシティを超えていた。
「航平くん、大学のサークルは最近どう? 試合とか近いの?」
結衣さんが歩調を合わせながら、まっすぐに俺の顔を覗き込んでくる。
「あ、ええと……。そうですね、来月あたりに、ちょっと大きなリーグ戦的なものがありまして。フォワードとしては、とにかく泥臭くても点をもぎ取らなきゃいけないなと……」
「へぇ、リーグ戦! 応援しに行きたくなっちゃうな。航平くんの真面目な性格なら、きっとチームみんなに頼りにされてるんだろうね」
「いや、そんな、全然ですよ。サボってばかりの生意気な後輩もいますし……」
いつものきっちり結んだ『佐倉先生』の髪ではない。肩の上でふんわりと揺れる髪。私服の結衣さんは、柔らかなクリーム色のサマーニットに、風に靡くロングスカートを合わせていた。
夜のバーで見るよりも何倍も眩しくて、綺麗で、俺は一瞬、自分が何者なのか忘れて立ち尽くしてしまった。
「お待たせ、航平くん。……って、どうしたの?ぼーっとして」
「あ、いや……すみません。結衣さん、その、私服がすごく素敵で。いつもと雰囲気が違って、びっくりしました」
ネイビーのカーディガンの襟元を必死に引っ張りながら、どうにか『大学生の余裕』を貼り付けて本音を口にする。すると結衣さんは、ほんのり耳の裏を赤くしてクスッと笑った。
「ふふ、ありがとう。航平くんこそ、夜に会うときと違ってすごく爽やかだね。なんだか新鮮かも」
その一言だけで、心臓の奥がじわじわと熱くなる。夏海に言われるがまま大人っぽいネイビーの服を選んで、本当に良かったと心から思った。
駅から美術館へと続く並木道は、休日を楽しむ家族連れやカップルで賑わっていた。
夜のバーのカウンターなら、適度な暗闇とマスターの存在が俺の防衛線になってくれていた。だけど、遮るもののない昼の太陽光の下、こうして肩が触れ合いそうな距離で隣を歩くというのは、十七歳の俺にとって完全にキャパシティを超えていた。
「航平くん、大学のサークルは最近どう? 試合とか近いの?」
結衣さんが歩調を合わせながら、まっすぐに俺の顔を覗き込んでくる。
「あ、ええと……。そうですね、来月あたりに、ちょっと大きなリーグ戦的なものがありまして。フォワードとしては、とにかく泥臭くても点をもぎ取らなきゃいけないなと……」
「へぇ、リーグ戦! 応援しに行きたくなっちゃうな。航平くんの真面目な性格なら、きっとチームみんなに頼りにされてるんだろうね」
「いや、そんな、全然ですよ。サボってばかりの生意気な後輩もいますし……」


