僕らは正しい答えを見逃したようです。第一巻

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 5月1日、日曜。パンドラ祭二日目、体育祭。

 今日もメインビジュアルは荘(そう)厳(ごん)楼(ろう)に掲げられたままだったが、文化祭の案内はすべて撤去され、看板は体育祭仕様に変わっていた。
 煽るような見出しが並び、まるで新聞の切り抜きだらけの掲示板みたいだ。

「パンドラのスピードスター、最速は誰だ!」
「団結こそ力!希望のバトンをどこまでもつなげ!」
「このチャンスは任せろ!3-B対3-F、三年連続の宿命対決!」
「シュートを決めろ!挑戦者1-H、王者3-Cへ挑む!」

 もちろん、今日の僕たちに一番関係のある見出しもあった。

「新世代の台頭!1-D vs 2-A!野球部によるバスケ内戦!」

 高木と風(かぜ)の写真まで使われていて、高木の端に僕の顔も少しだけ映っていた。
 脇役感がすごい。やっぱり写真を選ぶ時って、中心人物しか見ないんだな。

 僕だって一応野球部なんだから、一枚くらい単独で載せてくれてもよかっただろ。腹が立つ!

 今日も同じで、最初まず実行委員全員が会議室に集合した。
 伊藤委員長が短く激励したあと、すぐ解散となった。

 一日の流れは、午前9時から、各陸上種目の決勝。11時から球技の三位決定戦、午後1時半から決勝。競技終了後は3時から閉会パフォーマンス、4時から閉会式という流れらしい。

 夢ちゃんたちが来るのは午後1時半、つまり僕たちと2-Aのバスケ決勝だ。
 ヒロが来てくれるなら、試合中に何か有効な助言をくれるかもしれない。

 もっとも、風(かぜ)を徹底的に抑えろ、以上のことがあるのかはかなり怪しいけど。

 午前11時。陸上種目がすべて終わった後。
(悪くない。個人種目もクラス対抗リレーも入賞した。)

 僕と紫(ゆかり)木(き)は、実行委員として最後の仕事に向かう準備をしていた。

 クラス対抗バスケの三位決定戦の記録。
 対戦クラスに特に知り合いはいない。ただ片方は、僕たちが倒した相手だったはずだ。

 競技には何も出ていない紫木が、全力で何本も走ってきた汗臭い男を嫌がらないことを祈りつつ、僕は声をかけた。
 まあ、制服には着替えてきたけど。

「準備できたか?」
「もちろん!今の私は、羽冬(はねふゆ)がいなくても完璧に記録できるよ。」
「じゃあ、今回、正式な記録表もやってみるか?」
「うわ、やっぱ遠慮しておく。」

 最初はバスケをほとんど知らなかった紫木が、今ではファウルとバイオレーションの違いまで分かるようになっていた。
 学習速度は本当に異常だ。

「そういえば羽冬、今のところリバウンド数、一位だって知ってた?」
「え、マジ?」

 それは本気で知らなかった。
 高木より身長が10センチ近く低いのに、それは意外だった。

「昨日、別の記録係が上げてたデータも一緒に見たの。ちょっと計算して、今のところ、二位の高木くんより少し上だよ。頑張ってね、リバウンド王を取って。」
「じゃあ高木にはもっと外してもらわないとな。」
「高木くんは、今のところブロック数が一位だよ。二位とかなり差があるから、たぶんブロック王は確定かな。」
「すごいな。」

 真面目だな、紫木は。まるで、この仕事が心から好きみたいだ。

 試合中も、紫木との息が合っていて、最後の記録も順調に完成した。

「あ~やっと終わった。」

 記録用紙を生徒会の先輩に渡したあと、心の底からそう漏らした。

「そうだね。あとは羽冬たちの試合だけだよ。頑張って!」
「任せとけ。」

 今日は各クラスごとにグラウンド周辺へ休憩スペースが設けられていて、簡易テントまで用意されていた。
 とはいえ、実際にはほとんどの生徒が、試合の行われている場所へ集まって観戦していた。

 1年D組の休憩スペースへ戻る途中、紫木が不意に僕の袖を引いた。

「羽冬。」
「どうした?」

「今日、閉会式のあと、少し付き合ってくれる?」

 少し迷ったあとで、僕は頷いた。

「分かった。」

 ただの誘いではないかもしれない。
 そう思いながらも、できるならこの誘いを、まだ単純なものとして受け止めていたかった。

 時間は待ってくれない。
 世界は、誰か一人の迷いやためらいに合わせて止まってくれたりしない。

 たとえまだ正解にたどり着いていなくても、答えを出す期限だけは、運命みたいに少しずつ、確実に近づいてくる。