春の大型連休に、ほぼ毎日学校へ来ている中学生が何人いるだろう。運動部ならまだしも、文化部という立ち位置で。
図書室の机に広げられた紙の前で、しかめっ面をしている新聞部五人。
「はあー、目が疲れた。つか、なんで取材担当の俺まで借り出されんだよ」
隣の席でぐったりとうつ伏せになる姫先輩に、乙谷部長がギラリと眼鏡を光らせる。
「文句言わないで。今年の新入部員が名無くんだけなんだから仕方ないでしょう」
「あーあ、そのナナシは家族旅行で欠席だしなー」
「……愚痴ばかり言ってないで、早く別の構成を考えて。それに姫川くんだって快く引き受けてくれたのだと思っていたけど。違う?」
二人の間に挟まれながら、飛び交う台詞が当たらないように身を縮めた。
校内新聞の発行二週間前になると、部室もしくは図書室でカンヅメにされるのが鈴蘭中の恒例。
広げられた写真をしぶしぶ見ながら、姫先輩は今どきデジタル化をしない手作業の新聞部なんてあんのか、など文句を連ねている。
「王子さん、大変でしょう。いつも姫川くんの相手するの」
となりで文章のチェックをする乙谷部長が、あきれた声で笑った。
「嫌なことはハッキリ言えばいいのよ。年上だからとか関係ないから」
赤いラインを引く乙谷部長の横で、私はうんうんと強くうなずく。
部長は真面目で優しいから、きっと心配してくれているんだ。
「たしかに、すぐバカにしてくるので苛立ちはしますけど。気楽にいられるから、姫先輩のことは嫌いじゃないです」
花を咲かせたことのない仲間でもあるから、いてくれるだけで少し心強くもある。
淡墨桜のようなしとやかさを持つ花が、乙谷部長の横でゆらり揺れた。
少しだけ開いている花びらは、一度は恋を経験したことを表している。男子に興味のなさそうな乙谷部長も、誰かを好きになったことがあるんだ。
いつも良くしてくれるから、勝手に近く感じていたけど。なんだか遠い存在に思えてきた。
じっと見つめていたのを気付かれたのか、優しい目が首を傾げる。
だから慌てて紙へ視線を落として、ひたすら記事のことだけを考えた。
早く花を咲かせないと、あっという間に取り残されていく。
「ああー、腰痛てぇー。やっと終わった」
堕落した声を出す姫先輩に続けて、他の男子部員もドミノ倒しのように机へ伏せていく。
「みんなお疲れさま。ようやく完成したということで、これから少しお茶会しない?」
「お茶会……ですか。申し訳ないのですが、もうすぐ塾があるので帰らせていただきます」
「僕もゲームする予定があるから、ごめん」
乙谷部長の発言に、二年生の二人は口を揃えたように図書室を出て行った。
これは気まずい。眼鏡がギラリと光る時は、部長の機嫌が悪い証拠だ。
「じゃあ、俺もー」
カバンを手にして立ち上がる姫先輩の首根っこが、ぐいっと引っ張られる。
「なっにすんだよ」
「どこ行くの? 姫川くんは強制参加。当然でしょう。これは部長命令よ」
「なんで……」
「それと、もちろん王子さんもだからね」
「は、はい」
乙谷部長の気迫にたじろぎながら返事をすると、姫先輩は観念したようなため息を吐いた。
図書室の机に広げられた紙の前で、しかめっ面をしている新聞部五人。
「はあー、目が疲れた。つか、なんで取材担当の俺まで借り出されんだよ」
隣の席でぐったりとうつ伏せになる姫先輩に、乙谷部長がギラリと眼鏡を光らせる。
「文句言わないで。今年の新入部員が名無くんだけなんだから仕方ないでしょう」
「あーあ、そのナナシは家族旅行で欠席だしなー」
「……愚痴ばかり言ってないで、早く別の構成を考えて。それに姫川くんだって快く引き受けてくれたのだと思っていたけど。違う?」
二人の間に挟まれながら、飛び交う台詞が当たらないように身を縮めた。
校内新聞の発行二週間前になると、部室もしくは図書室でカンヅメにされるのが鈴蘭中の恒例。
広げられた写真をしぶしぶ見ながら、姫先輩は今どきデジタル化をしない手作業の新聞部なんてあんのか、など文句を連ねている。
「王子さん、大変でしょう。いつも姫川くんの相手するの」
となりで文章のチェックをする乙谷部長が、あきれた声で笑った。
「嫌なことはハッキリ言えばいいのよ。年上だからとか関係ないから」
赤いラインを引く乙谷部長の横で、私はうんうんと強くうなずく。
部長は真面目で優しいから、きっと心配してくれているんだ。
「たしかに、すぐバカにしてくるので苛立ちはしますけど。気楽にいられるから、姫先輩のことは嫌いじゃないです」
花を咲かせたことのない仲間でもあるから、いてくれるだけで少し心強くもある。
淡墨桜のようなしとやかさを持つ花が、乙谷部長の横でゆらり揺れた。
少しだけ開いている花びらは、一度は恋を経験したことを表している。男子に興味のなさそうな乙谷部長も、誰かを好きになったことがあるんだ。
いつも良くしてくれるから、勝手に近く感じていたけど。なんだか遠い存在に思えてきた。
じっと見つめていたのを気付かれたのか、優しい目が首を傾げる。
だから慌てて紙へ視線を落として、ひたすら記事のことだけを考えた。
早く花を咲かせないと、あっという間に取り残されていく。
「ああー、腰痛てぇー。やっと終わった」
堕落した声を出す姫先輩に続けて、他の男子部員もドミノ倒しのように机へ伏せていく。
「みんなお疲れさま。ようやく完成したということで、これから少しお茶会しない?」
「お茶会……ですか。申し訳ないのですが、もうすぐ塾があるので帰らせていただきます」
「僕もゲームする予定があるから、ごめん」
乙谷部長の発言に、二年生の二人は口を揃えたように図書室を出て行った。
これは気まずい。眼鏡がギラリと光る時は、部長の機嫌が悪い証拠だ。
「じゃあ、俺もー」
カバンを手にして立ち上がる姫先輩の首根っこが、ぐいっと引っ張られる。
「なっにすんだよ」
「どこ行くの? 姫川くんは強制参加。当然でしょう。これは部長命令よ」
「なんで……」
「それと、もちろん王子さんもだからね」
「は、はい」
乙谷部長の気迫にたじろぎながら返事をすると、姫先輩は観念したようなため息を吐いた。



