花咲く君は、いつか透明なハナになる

 ふわっと優しい香りがして、左耳の小さかった花がパァッと開く。

「別に、花が咲いたから好きになったわけじゃねぇし。どうなっても、華は華だろ」

 トクトクと、速かった心臓の音が心地よくなっていく。
 どうしよう……。今なら、ちゃんと伝えられる気がする。

「私も、好き……姫先輩が、死ぬほど好きです」
「……マジか」

 口元を押さえた姫先輩が、ぽつりとつぶやいた。
 照れている表情も、次になにを話すか考えている仕草も、すべてが愛おしく感じる。

「でも、俺の方が華より先に芽生えてるからな」
「えっ、うそ、いつから⁉︎」
「そん時は自覚なかったけど。レッスンしてるときには……じゃねーの」

 まだつぼみだとか、もう花が咲いているとか、そんなものは関係なかった。
 大事なのは、お互いの気持ちだと知れたから。

「あらためて、もっかいしてみる? あのシチュエーション」

 ほらおいでと両手を広げて、抱きつけと言わんばかりのジェスチャー。

「し、しませんからぁ……! ムリムリ、絶対ムリ!」

 真っ赤になって後退りする姿を見て、姫先輩が笑う。
 またバカにして! と頬を膨らませるけど、だんだんおかしくなって来て吹き出した。


 この胸を飛び回る感情を、一言では表せない。
 今日も私は、恋という得体の知れないものに振り回されている。