***
「やっぱり冴えない中級クラスの二人じゃ無理なのかな」
周りから食器とスプーンの擦れ合う音が聞こえてくる。
空腹を満たす匂いが充満する中、目の前で姫先輩が眉をひそめた。
「俺まで一括りにまとめんな。もっと感謝の意を示せ」
「恩義せがましい男はモテませんよ?」
「興味ない」
ちょこんと飾りのように居座る蕾をつんつん触って、こぶしほどある唐揚げを頬張る。
花が開いたら、これくらい立派なものになるんだろう。あそこに座るカップルなんて、この唐揚げと同等な大きさを誇らしげに付けている。
いつもは友達と来ている食堂。姫先輩に頼み込んで、一緒にお昼を食べてもらうことにしたのだ。
もちろん、恋未経験の仲間がいることをみんなに認識してもらうため。
「必死だな」
「当たり前ですよ。年頃の女子って、人の恋話が大好物なんです」
「ふーん。で、友達から笑い物にされてんだ?」
「逆です。最近、触れられな過ぎて逆に切ない……」
ああ、と察したような声を出して、姫先輩はハンバーグを食べる。
花が開いていないのは私だけじゃないというアピールをして、腫れ物に触るような接し方がなくなればいいと思った。
恋を知らなくても、みんなと同じ人の気持ちが通っていることに気付いてほしい。
「なあ、それ一口ちょうだい」
グイッと手が引かれて、食べかけの唐揚げがあっという間に姫先輩の口へ入った。
何食わぬ顔でもぐもぐと口を動かしながら、うまっと唇を舐めている。
か、か、間接キスじゃない!
わざわざ箸で持っているのを取らなくても、お皿の上に手を付けていないのがあったのに。
周りの人がこそこそと話している声が聞こえた。花を咲かせられない者同士、惨めだと。
サッと首を押さえて、小さな膨らみが見えないようにする。
一緒にいると、逆効果だったかもしれない。姫先輩まで、可哀想な人みたいに言われてしまった。
唇を噛み締めたとたん、ビーンと頬が引っ張られて餅みたいに顔が伸びる。
「なに……してるんですか?」
少しだけ変な声になった。口が横に広がっているから仕方ない。
「変な顔だなー。笑える」
小馬鹿にして笑うイタズラな指を払って、鼻をふんっとならす。
「姫先輩に言われたくないですよ」
「まあ、気にすんな」
「しますよ!」
言いながら残りの唐揚げにかぶりつく。そんな私の顔を見ながら、姫先輩はまたフッと笑って。
「ああ、そうだ。放課後用事あるから。じゃあ、また明日な」
いつの間にか空っぽになっていた皿を持って、彼は食堂を去って行った。その後ろ姿を見て、心がぽつりとつぶやく。
なんだ、今日はレッスンが出来ないのか。一日でも早く咲かせたいのに、残念。
「やっぱり冴えない中級クラスの二人じゃ無理なのかな」
周りから食器とスプーンの擦れ合う音が聞こえてくる。
空腹を満たす匂いが充満する中、目の前で姫先輩が眉をひそめた。
「俺まで一括りにまとめんな。もっと感謝の意を示せ」
「恩義せがましい男はモテませんよ?」
「興味ない」
ちょこんと飾りのように居座る蕾をつんつん触って、こぶしほどある唐揚げを頬張る。
花が開いたら、これくらい立派なものになるんだろう。あそこに座るカップルなんて、この唐揚げと同等な大きさを誇らしげに付けている。
いつもは友達と来ている食堂。姫先輩に頼み込んで、一緒にお昼を食べてもらうことにしたのだ。
もちろん、恋未経験の仲間がいることをみんなに認識してもらうため。
「必死だな」
「当たり前ですよ。年頃の女子って、人の恋話が大好物なんです」
「ふーん。で、友達から笑い物にされてんだ?」
「逆です。最近、触れられな過ぎて逆に切ない……」
ああ、と察したような声を出して、姫先輩はハンバーグを食べる。
花が開いていないのは私だけじゃないというアピールをして、腫れ物に触るような接し方がなくなればいいと思った。
恋を知らなくても、みんなと同じ人の気持ちが通っていることに気付いてほしい。
「なあ、それ一口ちょうだい」
グイッと手が引かれて、食べかけの唐揚げがあっという間に姫先輩の口へ入った。
何食わぬ顔でもぐもぐと口を動かしながら、うまっと唇を舐めている。
か、か、間接キスじゃない!
わざわざ箸で持っているのを取らなくても、お皿の上に手を付けていないのがあったのに。
周りの人がこそこそと話している声が聞こえた。花を咲かせられない者同士、惨めだと。
サッと首を押さえて、小さな膨らみが見えないようにする。
一緒にいると、逆効果だったかもしれない。姫先輩まで、可哀想な人みたいに言われてしまった。
唇を噛み締めたとたん、ビーンと頬が引っ張られて餅みたいに顔が伸びる。
「なに……してるんですか?」
少しだけ変な声になった。口が横に広がっているから仕方ない。
「変な顔だなー。笑える」
小馬鹿にして笑うイタズラな指を払って、鼻をふんっとならす。
「姫先輩に言われたくないですよ」
「まあ、気にすんな」
「しますよ!」
言いながら残りの唐揚げにかぶりつく。そんな私の顔を見ながら、姫先輩はまたフッと笑って。
「ああ、そうだ。放課後用事あるから。じゃあ、また明日な」
いつの間にか空っぽになっていた皿を持って、彼は食堂を去って行った。その後ろ姿を見て、心がぽつりとつぶやく。
なんだ、今日はレッスンが出来ないのか。一日でも早く咲かせたいのに、残念。



