花咲く君は、いつか透明なハナになる

「じゃあ、私もそこへ行けるように頑張りますから」

 本気の眼差しを向けたのに、ふっと視線が合わなくなる。

「その流れ、俺が同じとこ来て欲しいみてーじゃん」
「えっ、そうなんですか?」

 いつもなら、笑いながら王子には無理だろうって……あれ?
 そういえば、最近そのあだ名で呼ばれなくなった。やっぱり以前とは何かが違う。

「ぜってー、受かれよ」
「死ぬほど勉強します。また姫先輩と一緒にいたいもん」

 狐につままれた顔をしたあと、姫先輩はフッと笑った。

 春なんて来なければいいと思っていた。卒業してしまうのが寂しくて、会えなくなるのが悲しくて。
 単純だけど、同じ高校へ通えばその悩みも解決出来る。なんて意気込んだ私の耳にそっと触れて、

「ならさ、俺の特別な子になってよ」

 まっすぐな目に見つめられて、どんどん頬が熱くなる。

「……特別な、子?」

 聞き間違いじゃないかと、もう一度、頭の中で復唱してみる。たしかに、言っていた。
 ずっと私が欲しかった言葉。誰かの特別な存在になれたなら、どんなに素敵だろうって。

「そうだな……、幼馴染でも後輩でもなくて、理由なく会える。唯一無二の存在ってやつ」
「それって、えっと、つまり……?」

 私の頭ではキャパオーバーで、思考が正常に回らなくなってきた。

「……だから、あれだ、俺の彼女になってほしいって意味」

 姫先輩の頬がほんのり染まって、こっちにも伝染する。
 数秒間沈黙したのち、顔を見られないまま。

「花がなくなった私でも、いいんですか? 後悔しませんか? 優しいから、かわいそうだからじゃなくて?」

 感情の証は失って、私の耳は透明だ。
 いずれは反対の花も、萎れてなくなってしまうかもしれない。
 そうなったら、姫先輩の気持ちが離れてしまう気がして、怖い。

「好きだから……じゃ足りない?」