花咲く君は、いつか透明なハナになる

 空からちらほらと雪が舞う季節になった。カーディガンに身を包み、お弁当を頬張りながら窓の外を眺める。もうすぐ春が来るな、なんて思って。

「そういえば、今日からカンヅメ始まるんだっけ? 新聞部恒例のやつ」

 さあちんが箸を咥えながら、思い出したように言った。

「うん。またあのバタバタが始まるかーって思うと、今から疲れるけど」
「物語の続き気になるって、さあちんと話してたんだよね」
「そうそう。あれって、もう結末決まってたりすんの?」
「もちろん」

 えー! と高い声をあげた彩葉ちゃんが、お茶にむせて。背中をとんとんしてあげながら、三人で笑い合う。
 いつも一緒にいるわけじゃないけど、普通に話せるようになった。
 壊れてしまったなら、また新しく作り直せばいい。
 同じじゃなくても、違う形でも、手を繋いでみたら見えてくるものもある。

 昼食を終えて教室を出ると、階段をリズミカルに駆け降りながら新聞部の部室へ向かう。

「おっまたせしましたー!」

 ドアを開けると、すでに姫先輩がいて「おせーよ」と文句をたれる。
 出来上がったばかりの物語に目を通してもらいたくて、呼び出していたのだ。
 よっと立ちあがり、姫先輩がすかさずドアに鍵を掛ける。なんだかこの感じ、懐かしい。
 ほぼ毎日、あんな訳のわからないレッスンによく付き合ってくれていたなと思う。全てが過去のことになっちゃうのは、少し寂しい。
 アプリのメモを開こうとして、ふと頭を過ぎる言葉。

「姫先輩って、どこの高校行くんですか?」

 突拍子がなかったのか、先輩の目が驚いている。
 思いついてしまったら、聞かずにはいられないから。
 少し間を開けて、姫先輩がぽつりと。

「……青南(せいなん)」
「うわ……、普通にレベル高いですね。そっかぁ」

 青南と言ったら、県内で五本指に入る高校。
 そりゃそうだ。適当そうに見えて、この人頭は良いのだから。

「これでもランク落としてんだよ」
「なんで?」
「それを真顔で聞くな」

 ヒントもない難問でため息をつかれても。
 まあ、それは問題ではない。ここにあるのは、姫先輩が青南へ行くという事実のみ。
 キリッと表情を切り替えて、隣に座る姫先輩へずいっと近付く。