花咲く君は、いつか透明なハナになる

 手術は無事に成功した。後遺症(こういしょう)が残る心配もなく、二、三日もすれば退院出来るらしい。
 命に関わることにならなくて良かったと、お母さんもおばあちゃんも口を揃えて言う。
 その通りだと思うけど、私の心はまだ晴れない。少しだけ身軽になった右耳。鏡を見る勇気が、まだない。

 入院中みんながお見舞いに来てくれて、学校の話をしてくれた。河合さんが一年生に告白されたこと、高嶺くんがクラスメイトに勉強を教えていること。
 話していると病室が明るくなって、入院した時に比べると笑うことが増えた気がする。

「これ、高嶺くんに教えてもらった小説なんだけど、すごく面白かったの。よかったら、華ちゃんも読んでみて」
「メルもね、最近聴いてる曲リスト作ってきたんだから! テンション上がるよ」
「みんなありがとう。退屈してたから嬉しい」

 相変わらず無愛想な姫先輩は、みんなが病室を出る頃にサッと紙袋を布団に置いて、「ついで」と去って行く。
 昨日は王子さまみたいだったのに、今日はそっけないな……と思いながら紙袋の中身をのぞく。神様のミアンと、マコトが表紙の少年漫画が入っていた。

 ──信頼されるようになりたいって突っ走って、そんなん他は求めてないのにさ。

 ──王子にそっくり。

 ──神様にはこいつが必要なんだよ。

 あの日を思い出して、今更になってまた胸が締め付けられる。
 やっぱり、先輩はズルい。