花咲く君は、いつか透明なハナになる

 翌日、昼食を食べないでふて寝していると、横に置いてあるスマホが震えた。姫先輩の名前を見て、胸がキュッと苦しくなる。
 今は……出たくない。
 手の中で途切れるのを待っていると、シャッとカーテンが開いた。視線を上げたまま、ぽかんと口が開く。

「……会いに来た」

 スマホを手にした姫先輩が、目の前にいる。
 どうして……。
 シーツに顔を伏せると、他の足音が耳に入ってきた。

「それから、連れてきた。どうしても華と話したいって言うから」

 ドアの閉まる音がして、おもむろに顔を上げる。控えめに立っていたのは、彩葉ちゃんだ。
 一瞬、目が合ったけど逸らしてしまった。どうしたらいいのか、わからない。
 向こうも同じなのか、しばらく沈黙が続く。
 微かに息を吸う音がして、止まってを何度か繰り返されたのち。

「……こんなことになって、ほんとにごめんなさい」

 今にも泣き出しそうな顔で、声も震えている。

「ずっと、謝りたくて。避けてたことも、あの写真も……怖くて、断れなくて。でも、そのせいで華ちゃん……」

 そこまで言って、ぽろりと涙が流れ落ちた。反対からも大粒の玉が現れて、彩葉ちゃんがぼろぼろと泣き出す。

「……うん。彩葉ちゃんが……あんなこと」

 するはずないって、信じていた。スマホを奪われて勝手に送られたとか、知らずに貼ってしまったのだとか、都合よく考えるようにして。
 理由はどうであれ、彩葉ちゃんが分かってやったことだと確定して、正直裏切られた気分だった。

「……ごめん。ちょっと、ひとりにしてくれないかな。来てくれたのに、ごめんね」

 背を向けて、顔の半分まで布団をかぶる。
 足音が遠くなって、カーテンの向こうにいたであろう姫先輩も、病室を出て行く音がした。
 頭の中がぐちゃぐちゃで、どうしたらいいのか分からない。ひとりになりたいと言ったのは自分なのに、すごく寂しい。
 唸りのような声を押し殺して、誰にも気づかれないように泣いた。
 彩葉ちゃんを嫌いなわけじゃないけど、まだ気持ちの整理ができない。
 このやり場のない感情を、どこへぶつけたらいいのか。

 心では何も解決しないまま、恋咲き花を切除することだけが決まった。