花咲く君は、いつか透明なハナになる

 ピコン、ピコン。さっきから、床に転がったままのスマホから連続してトークが繰り広げられている。

『これ姫川センパイなんじゃね?』
『よしよしされてるやつ? それとも声?』
『両方』
『よしよしって。顔見えてないのによく分かるな』
『なんかちっさい子に見えてきた』
『姫川って誰? かっこいいの?』
『まあまあかな』

 いつの間にか、姫先輩の話題になっていた。勝手に盛り上がって、言いたい放題言って、みんなひどい。
 これ以上見えないように、スマホをスカートのポケットへ入れた。私のせいで……気まずい。

「あの、ごめんなさ……」
「みんな軽くディスりやがって。明日から顔隠して登校するかー」
「……え?」

 ネガティブなセリフとは裏腹に、けろっとした態度。特になにも困っていないような、むしろ落ち着いているというか。

「それともサボるか。一緒に」
「……えっ?」

 怒っていたはずなのに、今さらこの距離にうろたえている。
 息がかかるくらいの近さにドキドキして、中腰を支える足が揺らぐ。見つめられた瞳の中には私がいて、きれいな黒色に飲み込まれそう。
 あれ、どうして泣いて怒ってたんだっけ。

「はい、時間切れー」

 頭をガシッと押さえられて、ぐっと体が沈む。

「ちょっと、なにする……」
「まあ、ちゃんと自分を見ようとしてくれる人だけに? 分かってもらえればいーんじゃねぇの」

 そうだった。私は知りたい。どうして彩葉ちゃんが、こんなことをしたのか。自分の意思でしたと思えなくて、まだ心の奥底に信じている自分がいる。
 もう一度しっかり向き合って、話したい。

「明日、みんなで遊びに来て下さいね。お化けなんです、私」
「あー、このクラスは遠慮しとく」

 不安になっていた明日が、少しだけ軽くなって、大丈夫だよと言ってくれている気がした。