花咲く君は、いつか透明なハナになる

 ぞくりと体が震える。可愛らしいトイプードルのアイコン。貼ったのはーー、彩葉ちゃんだった。
 ざわつき始める教室。スマホをのぞきこみながら、こちらへチラチラと視線が飛んでくる。

「高嶺と付き合ってんだと思ってた。まさか二股?」
「イケメン独り占めしといて、ないわー」
「高嶺くんかわいそう」
「うっざ」

 違う、これは違うの。否定したいけど、口も体も動かない。

「ちょっと見る目変わっちゃうよね」

 普通に話していた子まで、軽蔑するような眼差しをしていた。
 付き合ってないし、二股もしてない。訂正したいけど、今何を言ったところで言い訳にしか聞こえない。
 高嶺くんの優しさに甘えてきた、バチが当たったのかな。

「でもさ、これグループトークに貼る神経もすごいよね」
「それ思った。普通に怖いんだけど」

 矛先(ほこさき)が、画像に誰が写っているから誰が貼ったかへ向けられる。
 こちらへ白い視線を流しつつ、口先では同じように彩葉ちゃんの悪口。

 ーー前から、性格悪いんじゃないかって思ってたんだよね。

 ありもしないようなことまで話し始めて、耳を塞(ふさ)ぎたくなった。
 少し流されるところはあったけど、いつも明るくて優しくて、彩葉ちゃんが誰かを悪く言うところなんて聞いたことはなかった。

「彩葉ちゃんは……、そんな子じゃないよ」

 ぽつりと放った言葉は、近くにいる彼女たちへすんなり届いていた。
 あっと思った時には、もう遅い。一瞬で顔色が変わって、口のお化けが牙を剥(む)く。

「えっ、なに? しっかり名前出てるけど。それに、あんたが言える立場なわけ?」
「そうだよ。高嶺くんに謝って。大路さんじゃ釣り合わない。身のほど弁(わきま)えなよ」

 女子たちは、吐き捨てるようにして去って行った。
 みんなに全てを理解してもらうのは、難しい。誤解であったとしても、一度失くした信用は簡単に取り戻せない。
 少しずつ前へ進めていると思っていたのに、どうしてこうなっちゃうのかな。