***
七月号の校内新聞が掲示されて、目に止めてくれる人がわずかながら増えた。相変わらず一部の女子からの無視は続いているけれど、自分の書いた文章を読んでもらえるだけでも救われた気になる。
「なんか小説っぽいの載ってない?」
「どれどれ? へえ、面白い。次号に続くのかな」
「ちょっと気になるね」
耳を大きくしながら、職員室の前を通り過ぎる。一年生にも興味を持ってもらえたみたい。心の中でガッツポーズをして、重かった足取りが軽くなる。
二年生の階へ上がって、足元に落ちる掲示物が目に入った。茶色い足跡が付いている。ふざけて遊ぶ男子に、また踏まれた。
まあ、これも現実だから仕方ないよね。拾い上げて掲示板に貼り直していると、
「あんなの誰も見ないのに。頑張るだけ無駄じゃね」
後ろから笑い混じりの声が聞こえた。ツンとした高いこの声は、さあちんだ。
ちらりと視線を送ると、バツの悪い顔をして去って行く。彩葉ちゃんも、あとを追いかけて逃げるようにいなくなった。
「大路さん、数学と体育時間変更だよ? もう着替えた方がいいんじゃない?」
「……そっか。ありがとう」
「うん、あっ、ちょっと待ってよー」
全員に避けられているわけじゃない。だから、大丈夫。卒業したら、こんな生活も終わる。
ーー華がいてくれて、良かった。
早く過ぎ去ってほしいはずなのに、まだここにいたいとも思う。
ーー私には響しかいないの。だから、絶対好きにならないでね。
先輩以上の感情は持ってはいけないと思いながら、もっと近付きたいと願う。いつも心は矛盾だらけ。
夏休みに入って二週目の土曜日。みんなとパンタシアワールドを訪れた。お母さんと選んだ花柄のチュニックと七分丈のデニムを、姿見の前で何度も確認して。初めてチークを付けて、ピンクのグロスリップを塗った。
駐車場まで車で送ってくれたお母さんと別れて、待ち合わせのゲートで落ち合う。
「今日の華ちゃん、いつもと違う。もしかして、メイクしてるの?」
顔を合わせてすぐ、乙谷さんがきらきらした目で私を見た。こくんとうなずくと、「すっごく可愛いよ」とほめてくれる。
隣を歩く高嶺くんも、「おしゃれだね。似合ってる」とさらに持ち上げてくれるから、照れくさくなってきた。
頑張って支度して良かったと思う反面、河合さんと前を歩く姫先輩は、何も気付いてくれていなそうで少し寂しくもなる。
「ねえねえ、ジェットコースター乗ろうよ! みんな早く早く」
「分かったから、ひとりで行き急ぐなって」
河合さんに腕を引っ張られながら、姫先輩がいつもの気だるそうな声を出す。
幼馴染なら、ああして触れることも自然に出来てしまうんだ。ちょっと羨ましいな。
七月号の校内新聞が掲示されて、目に止めてくれる人がわずかながら増えた。相変わらず一部の女子からの無視は続いているけれど、自分の書いた文章を読んでもらえるだけでも救われた気になる。
「なんか小説っぽいの載ってない?」
「どれどれ? へえ、面白い。次号に続くのかな」
「ちょっと気になるね」
耳を大きくしながら、職員室の前を通り過ぎる。一年生にも興味を持ってもらえたみたい。心の中でガッツポーズをして、重かった足取りが軽くなる。
二年生の階へ上がって、足元に落ちる掲示物が目に入った。茶色い足跡が付いている。ふざけて遊ぶ男子に、また踏まれた。
まあ、これも現実だから仕方ないよね。拾い上げて掲示板に貼り直していると、
「あんなの誰も見ないのに。頑張るだけ無駄じゃね」
後ろから笑い混じりの声が聞こえた。ツンとした高いこの声は、さあちんだ。
ちらりと視線を送ると、バツの悪い顔をして去って行く。彩葉ちゃんも、あとを追いかけて逃げるようにいなくなった。
「大路さん、数学と体育時間変更だよ? もう着替えた方がいいんじゃない?」
「……そっか。ありがとう」
「うん、あっ、ちょっと待ってよー」
全員に避けられているわけじゃない。だから、大丈夫。卒業したら、こんな生活も終わる。
ーー華がいてくれて、良かった。
早く過ぎ去ってほしいはずなのに、まだここにいたいとも思う。
ーー私には響しかいないの。だから、絶対好きにならないでね。
先輩以上の感情は持ってはいけないと思いながら、もっと近付きたいと願う。いつも心は矛盾だらけ。
夏休みに入って二週目の土曜日。みんなとパンタシアワールドを訪れた。お母さんと選んだ花柄のチュニックと七分丈のデニムを、姿見の前で何度も確認して。初めてチークを付けて、ピンクのグロスリップを塗った。
駐車場まで車で送ってくれたお母さんと別れて、待ち合わせのゲートで落ち合う。
「今日の華ちゃん、いつもと違う。もしかして、メイクしてるの?」
顔を合わせてすぐ、乙谷さんがきらきらした目で私を見た。こくんとうなずくと、「すっごく可愛いよ」とほめてくれる。
隣を歩く高嶺くんも、「おしゃれだね。似合ってる」とさらに持ち上げてくれるから、照れくさくなってきた。
頑張って支度して良かったと思う反面、河合さんと前を歩く姫先輩は、何も気付いてくれていなそうで少し寂しくもなる。
「ねえねえ、ジェットコースター乗ろうよ! みんな早く早く」
「分かったから、ひとりで行き急ぐなって」
河合さんに腕を引っ張られながら、姫先輩がいつもの気だるそうな声を出す。
幼馴染なら、ああして触れることも自然に出来てしまうんだ。ちょっと羨ましいな。



