「……やってみます」
「ありがとう! 物語は、他の二年生と名無くんにも手伝うように言っておくから」
パンッと手を合わせて、乙谷部長は安心した顔をする。それより、気になる単語が宙を舞う。
「……物語?」
「生徒たちに興味を持ってもらえる工夫を何か出来ないかって、先生に言われて。さっき、校内新聞にちょっとした物語を掲載するって話したんだけど……」
やっぱり聞いてなかった? と言いたげに、乙谷部長が苦笑する。
「バーカ。上の空になってっからだよ」
こつんと突かれて、頭を押さえた。あきれたように、姫先輩がかばんを肩にかける。
そのあとに河合さんがぴょこんとくっ付いて、胸のもやもやが広がっていく。……人の気も知らないで。
「まあ、俺もフォローしてやらなくはない」
「……どっちですか」
「頼ればいいって言ってんの。ほら、帰るぞ」
前と変わらない姫先輩に、花の香りが増す。違う視線が気にならなかったわけではないけど、斜め後ろを歩いてついて行く。
「待って、私も一緒に帰っていい?」
鍵を閉め終えた乙谷部長に、軽く腕を引かれる。いつもならそんなことしないから、少しだけ驚いた。
「えっ、もちろんです」
目を丸くした私を見て、そっと顔を近付ける。
「実は、試作品だった抹茶のお団子がメニューに出してもらえることになって」
「わあ、すごいです! おめでとうございます!」
「一番最初に、大路さんに伝えたくて。実を言うと、部活中もそわそわしちゃったの」
前を歩く姫先輩の腕に、河合さんの手が伸びる。やめろと言われながら、ぴっとりと体を寄せていく。
アメリカ帰りだから、それとも幼馴染だから。理由はどっちでもよくて、見たくなくて視線を斜め下へ落とした。
「よかったら、また遊びに来てね。物語考える時にでも」
「高嶺くんと……行きますね」
上手く笑えているかな。心は嬉しいはずなのに、唇が引きつって下がろうとする。
歩き始めていくらもしないうちに、乙谷部長が手を振って遠のいて行く。方向が違うから仕方ないのだけど、もう少しいて欲しかった。
誰かと話していないと、二人の会話や距離感を意識してしまうから。
こんなみにくい感情を知るくらいなら、花なんて咲かなかった方がよかった。
「ありがとう! 物語は、他の二年生と名無くんにも手伝うように言っておくから」
パンッと手を合わせて、乙谷部長は安心した顔をする。それより、気になる単語が宙を舞う。
「……物語?」
「生徒たちに興味を持ってもらえる工夫を何か出来ないかって、先生に言われて。さっき、校内新聞にちょっとした物語を掲載するって話したんだけど……」
やっぱり聞いてなかった? と言いたげに、乙谷部長が苦笑する。
「バーカ。上の空になってっからだよ」
こつんと突かれて、頭を押さえた。あきれたように、姫先輩がかばんを肩にかける。
そのあとに河合さんがぴょこんとくっ付いて、胸のもやもやが広がっていく。……人の気も知らないで。
「まあ、俺もフォローしてやらなくはない」
「……どっちですか」
「頼ればいいって言ってんの。ほら、帰るぞ」
前と変わらない姫先輩に、花の香りが増す。違う視線が気にならなかったわけではないけど、斜め後ろを歩いてついて行く。
「待って、私も一緒に帰っていい?」
鍵を閉め終えた乙谷部長に、軽く腕を引かれる。いつもならそんなことしないから、少しだけ驚いた。
「えっ、もちろんです」
目を丸くした私を見て、そっと顔を近付ける。
「実は、試作品だった抹茶のお団子がメニューに出してもらえることになって」
「わあ、すごいです! おめでとうございます!」
「一番最初に、大路さんに伝えたくて。実を言うと、部活中もそわそわしちゃったの」
前を歩く姫先輩の腕に、河合さんの手が伸びる。やめろと言われながら、ぴっとりと体を寄せていく。
アメリカ帰りだから、それとも幼馴染だから。理由はどっちでもよくて、見たくなくて視線を斜め下へ落とした。
「よかったら、また遊びに来てね。物語考える時にでも」
「高嶺くんと……行きますね」
上手く笑えているかな。心は嬉しいはずなのに、唇が引きつって下がろうとする。
歩き始めていくらもしないうちに、乙谷部長が手を振って遠のいて行く。方向が違うから仕方ないのだけど、もう少しいて欲しかった。
誰かと話していないと、二人の会話や距離感を意識してしまうから。
こんなみにくい感情を知るくらいなら、花なんて咲かなかった方がよかった。



