花咲く君は、いつか透明なハナになる

 高嶺くんのことは、好き。
 でも、恋愛感情なのか友達としてかは分からない。
 胸の鼓動が速くなってドキドキしているけど、花は咲いていないから。きっと、これは恋とは違うのだろう。

 子猫のように丸くなって、やっと手足の震えが収まってきた。
 どうしたら、高嶺くんを傷付けないで話すことが出来るかな。
 何事もなかったように振る舞うのは、薄情?
 断ったら、もう友達でいてくれない?
 これから好きになるかもしれないって、付き合うのは失礼かな。
 告白されるって、すごいな。
 今日一日あった嫌なことや良いことを、全て掻(か)っさらってしまうのだから。


***

 クラスの女子が声をそろえて羨(うらや)む席を、初めて変わりたいと思った。
 お互いに気まずさを拭えないからなのか、目が合ってもすぐ逸(そ)らして。心の中でカウントしても、今まで普通に話せていたことが出来ない。

「それどうなの? 花咲いてないってことは、好きじゃないのに付き合うってことじゃん。私なら絶対やだ」

 体育の授業は、隣のクラスと合同だから女子の噂話を聞く機会が増える。すなわち必然的に要らない情報まで耳に届くのだ。

「その人って、絶対に女たらしでしょ。女子なら誰でも良いんだよ、ぜったい」
「そうそう、友達が女子ばっかって塾で有名。あの子も分かっててバカだと思う」

 知らずのうちに、ジリリと地面を踏みしめる足に力が入っていた。
 もう……、やめてよ。その人の気持ちは、本人にしか分からない。勝手な憶測(おくそく)で、言いたい放題言わないで欲しい。

「恋は盲目ってやつになっちゃってるんだね。なんのために恋咲き花があるのか分かってるー? って教えてあげたい」
「分かる」

 鼻につく高笑いが、胸の奥まで響いて来て。自分へ向けられた刃のように入ってくる。
 他の人からしたら、きっと私も同じように見られるんだ。
 花が咲かなくても、たとえ恋じゃなくても、好きであることに変わりないのに。
 誰も傷付けないで、正しい選択をするのは難しい。