花咲く君は、いつか透明なハナになる

 パーティが終わったのは十八時になる頃で、途中まで方向が同じ高嶺くんが送ってくれることになった。
 学校では高嶺の花だと尊い存在にされている彼だけど、優しくて普通の男の子と変わらない。よく食べるし、よく笑う。全く近寄りがたくなんかない。

「……今日、姫川先輩に誘われて行ったけど、迷惑じゃなかったかな。知り合いでもない僕が混じって」

 あと意外に心配性。なんでも完璧に見えていたから、自信で覆われていると思っていた。

「どうして? みんな楽しそうだったし、私も高嶺くんがいてくれてすごく嬉しかったよ!」
「……よかった」

 白い頬が夕焼け色に染まる。
 教室だとポーカーフェイスの高嶺くんが、照れている顔を拝めるのはとても貴重だ。
それだけ心を許してくれているのかな。
 キレイな横顔から目を離すと、隣の足音が止まったことに気付く。

「……高嶺くん?」

 振り向いた先には、空の色を吸い込んだ顔があって。茜色に照らされた高嶺くんが、一歩こちらへ踏み寄る。
 ガラス玉みたいにきらきらした瞳は、じっと私だけを見つめて。


「僕、君のことが好きなんだ」


 まわりに漂う世界の音を消し去った。


 どうしよう……、どうしよう。
 家へ帰ると、玄関にお母さんとふーちゃんの靴があった。着くなり二階へ駆け上がったから、下から「はなー? 帰ってきたの?」とお母さんの声が聞こえてきた。
 それどころではなくて、頭から薄い掛け布団を被って十分前のことを思い出す。
 生まれて初めて告白された。未だに信じられなくて、髪の毛先から足のつま先に至るまで震えている。

 高嶺くんが……、私を好き?

 全く気付かなかった。うぬぼれてはいけないと思っていたから。
 振り返ってみたら、思い当たる節(ふし)はなきにしも非(あら)ず。
 真っ直ぐ見つめる高嶺くんに、何も答えられなかった。あまりの衝撃に固まって、戸惑うばかりで声が出なくて。
 まず、ありがとうと伝えられたら良かったのに。それすら出来なくて、一瞬だけ気まずい空気が流れた。


『いきなりごめん。付き合って欲しいとか、そうゆう意味で言ったわけじゃなくて。……ただ、知って欲しくて。ずっと前から好きだったこと』

 返事はいらないからと、家の曲がり角まで送ってくれた。