ボリューム満点でおいしいと有名なサンドイッチは、値段が高くて二つ入りを分け合った。
小腹が満たされてショッピングモールを出ると、もう一箇所だけ行きたいところがあると言われた。
スマホの時計では十六時を回ったところ。お母さんから連絡が入っていないことを確認して、カバンへ戻した。
少し斜め前を行く姫先輩に、小走りで寄って。
「どこ行くんですか?」
隣に並ぶと、視線を前方へ向ける。
「いいから」
「だって、こっち……」
駅から外れた住宅街を歩きながら、見慣れない景色を進んでいく。
連れられてのれんをくぐったのは、乙谷部長宅のカフェだった。裏側の道からだと、全く知らない場所に感じる。
入るなりパーンと賑やかな音が鳴って、赤や黄色の華やかな色が舞い上がった。
「ハッピーバースデー!」
ぽかんと立ち尽くす私の横で、クラッカーを手にした姫先輩が最後の紙吹雪を降らす。
「みんな……なんで……」
乙谷部長を始めとして、エプロン姿の夏摘さんと高嶺くんまでいる。
「姫川先輩から急にココアが来て。大路さん、今日誕生日なんだね。おめでとう」
「えっ、え? ありがとう……でも、なんで?」
思考が追いつかなくて、さっきから同じことしか言えない。
「たしか今日大路さんの誕生日だよねって、姫川くんにココアしたら。ちょうど今、目の前でうずくまってるって返事が来たから……その」
乙谷部長の声が小さくなっていくと、代わりに夏摘さんが続けて。
「だったら、うちでサプライズの誕生日パーティしないかって。おめでとうココアでさえビビって送れなかったくせに」
「な、夏姉……! それは」
「友達になれたこと、よっぽど嬉しかったみたいよ」
カウンターの奥からもう一人、女の人が出てきた。ふわりとした髪をひとつにまとめた落ち着きのある雰囲気で、手には抹茶色をした小ぶりのケーキを持っている。
「うちのメニューにはないから、見よう見まねで作ったものですけど。どうぞ召し上がって」
一番上のお姉さんだという冬妃さんが、続けて色とりどりのお団子やフルーツ大福も出してくれた。
ケーキの前に連れられて、ハッピーバースデーを熱唱されるなか、ろうそくに灯った火を吹き消す。少し恥ずかしげで、控えめに。
こんな風にお祝いされたの、何年ぶりだろう。風吹が生まれてからは、なかった気がする。
「ああー、腹減ったぁー」
ケーキに伸びた手を、すかさず乙谷部長が阻止して。
「これを一番最初に食べるのは、大路さんって決まってるの」と眼鏡の奥を光らせるから、飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。
面倒くさそうに、姫先輩はへいへいとフォークを引っ込める。
周りから笑い声が飛び交って、まるでお祭りみたいに騒がしい。
みんなの笑顔を見ていると、こっちまで胸の奥が温かくなってにやけてくる。不思議だ。
「……華」
は……な?
呼ばれて横を向いたとたん、ぽかんと開いていた口に甘くてまろやかな食感が入ってきた。
「ん、せんぱ」
さっき取った生クリームを食べさせて、そのまま自分の皿にあるものを口にする。
「これで俺も食える」
なんともないような顔で、フォークを共有している。嫌いだったら、そんなことしないよね?
姫先輩の考えていることが見えなくて、少しだけそわそわした。
小腹が満たされてショッピングモールを出ると、もう一箇所だけ行きたいところがあると言われた。
スマホの時計では十六時を回ったところ。お母さんから連絡が入っていないことを確認して、カバンへ戻した。
少し斜め前を行く姫先輩に、小走りで寄って。
「どこ行くんですか?」
隣に並ぶと、視線を前方へ向ける。
「いいから」
「だって、こっち……」
駅から外れた住宅街を歩きながら、見慣れない景色を進んでいく。
連れられてのれんをくぐったのは、乙谷部長宅のカフェだった。裏側の道からだと、全く知らない場所に感じる。
入るなりパーンと賑やかな音が鳴って、赤や黄色の華やかな色が舞い上がった。
「ハッピーバースデー!」
ぽかんと立ち尽くす私の横で、クラッカーを手にした姫先輩が最後の紙吹雪を降らす。
「みんな……なんで……」
乙谷部長を始めとして、エプロン姿の夏摘さんと高嶺くんまでいる。
「姫川先輩から急にココアが来て。大路さん、今日誕生日なんだね。おめでとう」
「えっ、え? ありがとう……でも、なんで?」
思考が追いつかなくて、さっきから同じことしか言えない。
「たしか今日大路さんの誕生日だよねって、姫川くんにココアしたら。ちょうど今、目の前でうずくまってるって返事が来たから……その」
乙谷部長の声が小さくなっていくと、代わりに夏摘さんが続けて。
「だったら、うちでサプライズの誕生日パーティしないかって。おめでとうココアでさえビビって送れなかったくせに」
「な、夏姉……! それは」
「友達になれたこと、よっぽど嬉しかったみたいよ」
カウンターの奥からもう一人、女の人が出てきた。ふわりとした髪をひとつにまとめた落ち着きのある雰囲気で、手には抹茶色をした小ぶりのケーキを持っている。
「うちのメニューにはないから、見よう見まねで作ったものですけど。どうぞ召し上がって」
一番上のお姉さんだという冬妃さんが、続けて色とりどりのお団子やフルーツ大福も出してくれた。
ケーキの前に連れられて、ハッピーバースデーを熱唱されるなか、ろうそくに灯った火を吹き消す。少し恥ずかしげで、控えめに。
こんな風にお祝いされたの、何年ぶりだろう。風吹が生まれてからは、なかった気がする。
「ああー、腹減ったぁー」
ケーキに伸びた手を、すかさず乙谷部長が阻止して。
「これを一番最初に食べるのは、大路さんって決まってるの」と眼鏡の奥を光らせるから、飲んでいたりんごジュースを吹き出しそうになった。
面倒くさそうに、姫先輩はへいへいとフォークを引っ込める。
周りから笑い声が飛び交って、まるでお祭りみたいに騒がしい。
みんなの笑顔を見ていると、こっちまで胸の奥が温かくなってにやけてくる。不思議だ。
「……華」
は……な?
呼ばれて横を向いたとたん、ぽかんと開いていた口に甘くてまろやかな食感が入ってきた。
「ん、せんぱ」
さっき取った生クリームを食べさせて、そのまま自分の皿にあるものを口にする。
「これで俺も食える」
なんともないような顔で、フォークを共有している。嫌いだったら、そんなことしないよね?
姫先輩の考えていることが見えなくて、少しだけそわそわした。



