ウサミとマヒロ

#5

「……じゃあ、宇佐美の事送ってくるから」
「え、別にええよ。家に居り。外暗いで」

宇佐美の言葉を無視して靴を履く。

「真宏〜、気をつけて帰って来るんだぞ。壱哉も、また飯食いに来な」
「宇佐美さーん! あたしも! また会いたいー!」

涼雅と杏が戯れている間に玄関の外に出る。
杏はすっかり目をハートにして宇佐美を、気に入ってしまった。
アイツは面食いだからな。
……ああ、夜は涼しいな。
涼雅のご飯は美味しい。愛を感じている毎日。
だからきっと、宇佐美も食べられるんだろうな。
今日宇佐美は、顔色悪くなることも無くちゃんと食べれていた。
食が細いのか完食とまではいかなかったけれど、真宏の時よりも安心した顔をして食べていた。
……悔しい。
涼雅の料理を美味しく食べてくれるのは嬉しい。
……だけど何故か、悔しくて、堪らなかった。

「真宏〜、見送りなんてええって別に」
「……」
「……なあ真宏、無視は感じ悪いんとちゃうか」

……正論だ。でも俺は話せる気力が無い。
イラついてもいる。
でもその他にも、感情が入り交じっていてもうよく分からない。

 

「…………………………か」
「え?」
「……俺は、お礼に何すればいいですか」

真宏が目を合わせずに訊くと、宇佐美はピタリ、と立ち止まった。

「うーん、せやなあ」

宇佐美はポケットに手を突っ込み、月を見ながら微笑んだ。


「……真宏、俺の事好きになってもうた?」


真宏の態度が初めの頃と違う事、顔も声も友人やただの後輩のソレでは無い事。
宇佐美は分かっていた、わかってしまっていた。
もしそれが事実であるなら、宇佐美はもう真宏とは居られない。
それが宇佐美のルールだったから。


「……ほな、次の土曜の午後家来てや。
……そんで、終いにしよか」


ほら、分かっていた。終わりが来ることを、出会ったその瞬間から、自分達の間に始まるものは何も無かったのに。
宇佐美は立ち竦む真宏の横を通り過ぎそのまま帰って行った。

始まった瞬間に、終わったのだ。

「真宏、どした? 元気ないね今日」

休日が明け、また1週間が始まる。
だけれどこの一週間はとても憂鬱だった。なぜなら週末、宇佐美に会わなくてはいけないから。
ハゼや久我はテンションが低い真宏を心配するも、真宏は事情を話せないでいた。

「真宏〜。しかめっ面すごいよー?」
「もしかして、また宇佐美さんと喧嘩したん?」

久我の、台詞に思わず目を伏せてしまった。

「えっまた喧嘩したの!?」

……してないよ。誰とも喧嘩なんて。

「……真宏、本当にどうしたの? 僕達にも話せないこと?」

ギュッと手を握られるも、口は開けない。何も言えぬままそのまま突っ伏していると、ポンポンと頭を撫でられる。

「……ま、何があったのか知らねぇけど、放課後カラオケでも行く?」
「おっいいねぇ! 久しぶりに行きたーい! 真宏は? 行こうよ!」

二人の優しい笑顔に胸が苦しくなる。
……そうだよな、気を遣わせちゃって俺、馬鹿だ。

「……俺も、行きたい……!」
「よし、じゃあ今日はバンバン歌って発散しよーぜー!」
「隆ちゃんはいつも発散してるでしょ」
「たしかに」

3人で笑い合い、漸く心に元気を取り戻してきた気がした。