ウサミとマヒロ

#5

……俺もうあそこ行けないかもな。スーパーから少し離れたところまで歩き、「はぁ」とため息を吐くと、宇佐美はケラケラ笑って真宏に話しかける。
「真宏なぁ、猪突猛進過ぎひん? さっき俺が居らんかったらどないするん? 」
面白そうに訊かれ、疲れた頭を項垂れさせながらぼんやり考える。
そういえばあの店内で誰も真宏の味方をしようともしていなかったのに、何故か宇佐美だけは助けてくれた。
真宏の連れとして、だろうが宇佐美が自分のために行動を起こしてくれるとは思わなかった。
「……別に。殴られてたんじゃないですかね」
「え? 」
何故か宇佐美に驚いた顔をされ、真宏も怪訝に思い見上げる。
「なに? 」
そう訊けば、宇佐美は「いや、随分あっさりやな」といった。
「何が? どう考えても殴られるでしょ、あれは」
だって俺、別に喧嘩強くないし。
「殴られんのわかって飛び出したん? この前も、さっきも」
「そりゃまあ」
ってか大体、なんでこいつといると次から次へとトラブルが舞い込んで……。
あ、これが噂の“付き合うとろくなことない”てやつの真相か……!? 
一人で考えていると宇佐美は、ぽそりと訊いてくる。
「怖いとか思わんの? 」
「怖い? なんで? 」
そんなの思ったことないな。
だって殴られるの分かってて突っ込んでるのは自分だしな。
「絶対自分に負なことが起こんのにわかってて突っ込むんは、むちゃくちゃな馬鹿とちゃう? 」
「はあ? 」
ストレートに言われ、真宏は思わず声を荒げた。
けど宇佐美はいたって不思議そうに言ってくるので、真宏は心を落ち着け返す。
「だって仕方ないじゃん。体がうごくんだもん」
気づいたら駆け出しているのだ、いつも。
怖いとか、痛いとか、思う前に。
助けなきゃ、などと大層な思いはいつも抱いていない。
ただ、知らないうちに体が動いるのだ。
「真宏は、ヒーローなんやな」
宇佐美の言葉にぽかんと口を開け見上げる。
「俺は、好きやで、ヒーロー」
爽やかで毒のない笑みを浮かべる宇佐美を見て、ドッドッドッとまた心臓の鼓動が速くなる。
「……そんな、かっこよくはない」
宇佐美から目をそらし、熱くなる顔を隠したかった。
なんだよちょっとキュンとしちゃ……
「ま、俺の方がイカしとるけどな」
……てねぇわ。
前言撤回。やっぱりこいつなんて絶対好きにならねぇ。
「あっそ!! そんなに自分が好きなら、鏡の中の自分に愛を囁いてろばーか!! 」
どすどすと先輩を置いて歩きを速めると、後ろからついてくる先輩が「いやそれはキショいやろ」と真面目にツッコんできた。
「知るか!!! 」
「なにキレとんねん」

ケラケラ笑う宇佐美の優しい横顔にドキドキするのは、全部夏の暑さのせいだろう。