ウサミとマヒロ

#3






「ねぇ、なんでマオちゃんは余計なことばかりしてんの? 」
「あ゛ぁ゛!? 」
留守番組であるハゼと久我は暇を持て余して、マオをからかう事にしたらしい。
ハゼの言葉にマオは噛み付く。
「だってマオちゃん、真宏の事好きでしょ? 」
マオは誰にも話していない自分の恋心を当てられ、先程まで苛立っていた気持ちが消え、代わりに激しく鼓動が高鳴り顔が赤くなるのを感じた。
「な、なななんああ!? 」
「マオ先輩分かりやすすぎワロタ」
久我は他人事のように楽しそうにマオを笑う。
「っんな事、一言も言ってねぇだろ!! 何勝手に……」
「だって、今日僕らを集めたの真宏のためでしょ」
ハゼにじとりと見られたマオは思わず口を噤んでしまう。
何故ならそれが、図星だったからだ。
「真宏がうさ先輩に気に入られてるから、くっつけようとしてんでしょ? 」
「……っいや、そうじゃない」
咄嗟に否定するとハゼは「じゃあ何よ」と言ってくる。
「…………アイツが、……宇佐美と喧嘩したって言うから」
あの日たまたま廊下から、屋上に向かう真宏を見かけた。声をかけようと後を着いて行ったら、宇佐美と話しているのを聞いてしまった。
真宏が屋上を飛び出した後に、一つ文句を言おうと屋上に行ったら、宇佐美から真宏の筆箱を渡されたのだ。
「追いかけてやってくれ」と宇佐美に頼まれたマオは筆箱を持ち、宇佐美に文句を言う前に真宏をフォローしに向かったのだ。
自分の教室で一人項垂れる後輩は、酷く悲しげで声をかけるのは少し[[rb:憚 > はばか]]られた。
自分の知ってる後輩は、凛と澄ました顔で、いつも背筋が伸びていて堂々としているのにあの時は珍しく意気消沈していたから。
マオが伊縫の存在を初めて知ったのは、宇佐美に幼馴染を泣かされた苛立ちを中庭でぶつけていた時だった。
拳を振り上げた瞬間に何かが走ってきたと思ったけど、勢いを止められずにそのまま殴ってしまった。
片思いしていた幼馴染が泣かされた苛立ちが収まらず血が上っていたマオは、真宏に怒鳴りまくった。
けど真宏はぐっと真っ直ぐな瞳でマオを見て「謝れ」と怒った。真宏はマオと宇佐美に平等に怒った。
主張がめちゃくちゃだと思ったりもしたけれど、真宏の、相手をしっかりと見て向き合う姿にいつしかマオはいとも簡単に心を奪われていたのだ。
……そしてこんなにも、人と向かい合うことができる人間がいるんだ、と感動もした。
「喧嘩なんて当人らに任せとけばいいじゃん。なんなの? お人好しなの? 」
マオは呆れた顔を向けられるつつ、眉を寄せ小さく呟いた。
「……宇佐美と仲直りすれば、……伊縫は宇佐美の事考えないって言ったんだ」
折角慰めるついでに二人でラーメンを食べていたのに、あの後輩は店に入るまでも、店に入った後も、ずっと宇佐美の事ばかり話していた。本人は愚痴のつもりだったのかもしれない。
けれどすでに好きだと自覚してしまったマオからしたら、そんな話聞きたくなかった。
「え、ちょっと待って!! たったそれだけのために、こんな計画立てたの!? しかも朝七時に僕たちを怒鳴り起こして!? 」
ハゼは自分達がその為だけに利用されたと知り、目を丸くして身を乗り出した。
「……な……だって、……友達って、……何時に集まんのか知らねぇし」
この気性の荒い性格のせいで元々友達と呼べる人が居ないマオには、友達がなんの目的で何時頃、どこに集まるのかなどさっぱりわからなかったのだ。
「……なんなのマオちゃん……めっかわじゃん」
ピュア通り越してクリアなのではと言いたくなるほど、目の前の強面な先輩が純粋で、ハゼも久我も目を丸くした。
「天然記念物だな」
久我の台詞にマオは首を傾げる。
「俺はイリオモテヤマネコじゃねぇぞ」
「……まぁ。中らずとも遠からずって感じだよな」
「猫だしね」

マオは彼らの言葉を聞きもせずため息を吐いて、早く伊縫帰ってこねぇかな、なんて考えていた。