#9
*
「……で、俺かっこええやろ?とか言うんですよ!?マジありえなくないですか!?どこがだよっつーの!」
ずるずると麺を啜りつつ盛大に愚痴っていると、猫宮がぽけーっと真宏の手元を見ている事に気づく。
「あの、聞いてます?」
不審に思い眉を寄せると、猫宮はポケッとしたまま発する。
「なぁ、お前の体のどこに3キロ分の食いもんが入るんだ?」
「すいません、替え玉くださーい」
「まだ食うのかよ!」
店員さんが何故か怯えながら替え玉をくれて、びゅぅんっと光の速さでカウンター内に戻ってしまった。
店員さんが何やらこちらを見てヒソヒソしているのが見える。
「だから、俺は言ってやったんですよ。お前の事なんか大っ嫌いだかんなって!」
「なぁ、会計俺持ちだよな?少しは遠慮とか……」
「マジ腹立ちません?あのすかした顔!ほんっとムカつく!もやしにしてジャキジャキ食ってやりたい!!」
真宏は猫宮の話を聞く気は無く、一心不乱にもやしをシャキシャキいわせながら食べている。
真宏のストレス発散は昔から大量に料理しそれを消費する事、大食いをすることがだった。
別に真宏自身隠してきたつもりは無いけれど、これはハゼも久我もまだ知らない。
この学校では猫宮しか知らないだろう。
「お前、昼んときこんな食ってなかったじゃん」
あからさまに引いた顔をしつつ問うてくる猫宮に、真宏は麺を啜りつつ答える事にした。
「学校にこんな量持ってきたら重いじゃないですか」
「あ、そこなのか」
猫宮は何やらぶつぶつ言っていたが、とりあえず目の前のラーメンを食べることに集中する。
真宏自身本当は、これぐらい持ってきて勉強のストレスを発散したいけど重いし、「食費がかかるので……」と涼雅に泣きながら頼まれた為、真宏も流石にお願いする事は無くなったのだ。
「俺、お前の事なんも知らねぇな」
唐突にぽそりと呟く猫宮の言葉に、真宏は煮卵を食べようとしていた手を止め顔を上げた。
その視線に気づいた猫宮は自分が思わず呟いてしまった事に気づき恥ずかしくなりまた顔を赤くして「な、何見てんだぶっ殺すぞ!」と叫んでしまう。
そんな様子を不思議そうに首を傾げながら見ていた真宏は言った。
「まだ知り合ったばっかなんですもん。当り前じゃないですか。ってか、すでに色々知られてたら気持ち悪いし」
真宏はさも当たり前かのように言って退ける。猫宮はそんな真宏の台詞に少し驚いたけれど、照れ臭さは消え穏やかな心持ちになった。
「…………それも、そうだな」
この人は案外表情豊かなんだと真宏も一つ、猫宮の新しいところを知った。
残っていたもやしやキャベツをシャキシャキと食べ、麺を啜るれば味噌ベースの辛い味がもうなんとも体に染み渡る。
「先輩もう食べないんですか?お茶碗くらいの量しか食べてないじゃないですか」
「ちゃ……!?丼一杯、一人前の量食ったわ!アホか!」
何もそんなに大声を出さなくても聞こえるんだけどな……なんて思うし、真宏からしたら、この店に座るお客さん皆茶碗くらいの量しか食べてないように見えているのだから致し方が無い。
宇佐美は、きっと丼一杯も食えないんじゃないか?
なんて思ったところでまた自分が、意図せず宇佐美の事を考えている事に気づいてしまった。
「あ~アイツの顔思い出したらまたムカついてきた!!」
苛立ちに身を任せ勢いよく麺を啜ってしまって、ちょっと噎せた。猫宮は呆れた顔をして水を差し出してくる。
「また宇佐美の事考えてんのかよ」
「別に考えたくて考えてるわけじゃないですよ!アイツの顔が勝手に出てくるんですよ、こう、うざい感じに!」
必死に苛立ちを説明しようと身振り手振りしているが、心做しか猫宮は真宏から視線を外し、不機嫌そうに頬杖をついていた。
まあ元々猫宮の機嫌が良い方が少ないと思うけれど。
「……んな気になんなら仲直りすりゃいいだろ」
「相手が頭下げてきたら考えなくもないですけどね」
最もな事を言われるが、こちらから謝ろうなんて真宏は毛頭思っていない。
一方的に、自分を好きになるな、だなんて自信満々自意識過剰もいい所だろう。
調子に乗るなっつーの!
「じゃあ、アイツがお前に謝ったら、お前はもうアイツの事考えないのか?」
丼を持ち上げスープを啜っていた為猫宮の顔が隠れてしまっていたが、スープを飲み干し丼を置いて目を見れば、何故かキラキラと期待に満ちた瞳で真宏を見つめていた。
「え?」
思わぬ台詞になんて返すべきなのか分からず、見つめてしまう。
真宏は別にしつこく根に持つような性格では無いと思っているし、ごめんなさい、って言われた事に関してはそれ以上追求する気はない。
だからきっと、謝罪されれば許さない事は無いだろうけど何故それを猫宮が気にしているのかが分からない。
猫宮からしたら真宏の事を心配しているだけ、なのだろうか。
「なぁ、どうなんだよ」
「……そうですね。謝られたら水に流してやりますよ」
何故そこまで猫宮が真宏を気にかけているのか、そんなこと真宏は知る由もないので、真宏の返事に「そうなのか……!」とやけに嬉しそうな顔になった猫宮を不思議に思いつつ、キンキンに冷えたお冷で喉を潤した。
*
「……で、俺かっこええやろ?とか言うんですよ!?マジありえなくないですか!?どこがだよっつーの!」
ずるずると麺を啜りつつ盛大に愚痴っていると、猫宮がぽけーっと真宏の手元を見ている事に気づく。
「あの、聞いてます?」
不審に思い眉を寄せると、猫宮はポケッとしたまま発する。
「なぁ、お前の体のどこに3キロ分の食いもんが入るんだ?」
「すいません、替え玉くださーい」
「まだ食うのかよ!」
店員さんが何故か怯えながら替え玉をくれて、びゅぅんっと光の速さでカウンター内に戻ってしまった。
店員さんが何やらこちらを見てヒソヒソしているのが見える。
「だから、俺は言ってやったんですよ。お前の事なんか大っ嫌いだかんなって!」
「なぁ、会計俺持ちだよな?少しは遠慮とか……」
「マジ腹立ちません?あのすかした顔!ほんっとムカつく!もやしにしてジャキジャキ食ってやりたい!!」
真宏は猫宮の話を聞く気は無く、一心不乱にもやしをシャキシャキいわせながら食べている。
真宏のストレス発散は昔から大量に料理しそれを消費する事、大食いをすることがだった。
別に真宏自身隠してきたつもりは無いけれど、これはハゼも久我もまだ知らない。
この学校では猫宮しか知らないだろう。
「お前、昼んときこんな食ってなかったじゃん」
あからさまに引いた顔をしつつ問うてくる猫宮に、真宏は麺を啜りつつ答える事にした。
「学校にこんな量持ってきたら重いじゃないですか」
「あ、そこなのか」
猫宮は何やらぶつぶつ言っていたが、とりあえず目の前のラーメンを食べることに集中する。
真宏自身本当は、これぐらい持ってきて勉強のストレスを発散したいけど重いし、「食費がかかるので……」と涼雅に泣きながら頼まれた為、真宏も流石にお願いする事は無くなったのだ。
「俺、お前の事なんも知らねぇな」
唐突にぽそりと呟く猫宮の言葉に、真宏は煮卵を食べようとしていた手を止め顔を上げた。
その視線に気づいた猫宮は自分が思わず呟いてしまった事に気づき恥ずかしくなりまた顔を赤くして「な、何見てんだぶっ殺すぞ!」と叫んでしまう。
そんな様子を不思議そうに首を傾げながら見ていた真宏は言った。
「まだ知り合ったばっかなんですもん。当り前じゃないですか。ってか、すでに色々知られてたら気持ち悪いし」
真宏はさも当たり前かのように言って退ける。猫宮はそんな真宏の台詞に少し驚いたけれど、照れ臭さは消え穏やかな心持ちになった。
「…………それも、そうだな」
この人は案外表情豊かなんだと真宏も一つ、猫宮の新しいところを知った。
残っていたもやしやキャベツをシャキシャキと食べ、麺を啜るれば味噌ベースの辛い味がもうなんとも体に染み渡る。
「先輩もう食べないんですか?お茶碗くらいの量しか食べてないじゃないですか」
「ちゃ……!?丼一杯、一人前の量食ったわ!アホか!」
何もそんなに大声を出さなくても聞こえるんだけどな……なんて思うし、真宏からしたら、この店に座るお客さん皆茶碗くらいの量しか食べてないように見えているのだから致し方が無い。
宇佐美は、きっと丼一杯も食えないんじゃないか?
なんて思ったところでまた自分が、意図せず宇佐美の事を考えている事に気づいてしまった。
「あ~アイツの顔思い出したらまたムカついてきた!!」
苛立ちに身を任せ勢いよく麺を啜ってしまって、ちょっと噎せた。猫宮は呆れた顔をして水を差し出してくる。
「また宇佐美の事考えてんのかよ」
「別に考えたくて考えてるわけじゃないですよ!アイツの顔が勝手に出てくるんですよ、こう、うざい感じに!」
必死に苛立ちを説明しようと身振り手振りしているが、心做しか猫宮は真宏から視線を外し、不機嫌そうに頬杖をついていた。
まあ元々猫宮の機嫌が良い方が少ないと思うけれど。
「……んな気になんなら仲直りすりゃいいだろ」
「相手が頭下げてきたら考えなくもないですけどね」
最もな事を言われるが、こちらから謝ろうなんて真宏は毛頭思っていない。
一方的に、自分を好きになるな、だなんて自信満々自意識過剰もいい所だろう。
調子に乗るなっつーの!
「じゃあ、アイツがお前に謝ったら、お前はもうアイツの事考えないのか?」
丼を持ち上げスープを啜っていた為猫宮の顔が隠れてしまっていたが、スープを飲み干し丼を置いて目を見れば、何故かキラキラと期待に満ちた瞳で真宏を見つめていた。
「え?」
思わぬ台詞になんて返すべきなのか分からず、見つめてしまう。
真宏は別にしつこく根に持つような性格では無いと思っているし、ごめんなさい、って言われた事に関してはそれ以上追求する気はない。
だからきっと、謝罪されれば許さない事は無いだろうけど何故それを猫宮が気にしているのかが分からない。
猫宮からしたら真宏の事を心配しているだけ、なのだろうか。
「なぁ、どうなんだよ」
「……そうですね。謝られたら水に流してやりますよ」
何故そこまで猫宮が真宏を気にかけているのか、そんなこと真宏は知る由もないので、真宏の返事に「そうなのか……!」とやけに嬉しそうな顔になった猫宮を不思議に思いつつ、キンキンに冷えたお冷で喉を潤した。

