ウサミとマヒロ

プロローグ


あの人は、俺を「ヒーロー」だと言った。
 
けど俺は、自分の前から居なくなるあの人に手を伸ばす事も、縋る事さえも出来なかった。
諦めた訳では無い。
 
「悪」になり切れず、手段を選んでしまった。
 
いっその事、自分が悪い人間であったなら方法なんて、周りの目なんて、世間体なんて気にもせずに今あの人とまだ笑いあえていたのかもしれない。

格好つけのあの人は、知らぬまに誰かを守っていて、いつも誰かの代わりとなって犠牲になり苦しんでいた。
 
俺はそれを隣で見てきたのに、気づいた時にはいつも手遅れだった。
 
あの人は、俺と居て幸せだったのだろうか。

俺はまだ大人になんかなりきれていない。
 
……もし、貴方を諦めることが大人になることの1つなのだとしたら、俺は一生我儘で馬鹿な子供のままでかまわない。
 
例え『出来損ないの非力なヒーロー』だとしても、俺の中に募っている想いの重さや大きさも未来永劫、彼と出会った事実がある限り変わることはないのだ。

─……そして俺は今も、あの人の事をずっと信じているのだ。