サクとアキが高校を卒業し、新しい一人暮らしの扉を開く日常から、遡ること一年とあまり前。
彼らがまだ、高校二年生の秋のこと。
高二の文化祭が無事に幕を閉じ、週が明けた十月の終わりの平日の放課後。図書室では、またいつも通りの静かさで穏やかな時間が流れていた。
僕は、アキの初めての友達のめいさんと一緒に、図書室のカウンターで他愛のない話をしていた。
そこへ、駿が「よお」と、いつも通りの気怠げな風を装って図書室に入ってきた。けれど、あいつの目はどこか泳いでいて、ブレザーの襟を何度もそわそわと直している。
「駿、どうしたんだよ。図書室なんて珍しいじゃん」
僕が声をかけると、駿はポケットに手を突っ込んだまま、小さく咳払いをした。
「いや……ちょっと、橘先輩が、ここで勉強してるって聞いたからさ……」
駿にとって、橘先輩はただただ眩しすぎる「高嶺の花」だった人だ。当時は普通に手が届かなくて諦めた、駿の甘酸っぱい過去の失恋。
だけど、今の駿の横顔を見ていると、何かが確実に変わったのが分かった。小1のあの日からずっとあいつを縛り付けていた重い鎖を、僕との和解でようやく手放すことができたんだ。だからこそ、こうして一人の男子高校生として、少しだけ自分の恋に前を向く余裕が生まれたのかもしれない。あいつのそんな不器用な変化が、僕にはたまらなく嬉しかった。
「あ、みんないるじゃん。お疲れー」
その時、図書室の入り口から、もう一人の名前も知らない女の先輩と楽しそうに話をしながら入ってきた綺麗な人が、僕たちの姿を見つけてパタパタと嬉しそうに駆け寄ってきた。駿がずっと見上げていた、高嶺の花――部活の先輩で今は受験生である、橘先輩だった。
「あ、橘先輩……! お疲れ様です。どうしたんですか?」
彼らがまだ、高校二年生の秋のこと。
高二の文化祭が無事に幕を閉じ、週が明けた十月の終わりの平日の放課後。図書室では、またいつも通りの静かさで穏やかな時間が流れていた。
僕は、アキの初めての友達のめいさんと一緒に、図書室のカウンターで他愛のない話をしていた。
そこへ、駿が「よお」と、いつも通りの気怠げな風を装って図書室に入ってきた。けれど、あいつの目はどこか泳いでいて、ブレザーの襟を何度もそわそわと直している。
「駿、どうしたんだよ。図書室なんて珍しいじゃん」
僕が声をかけると、駿はポケットに手を突っ込んだまま、小さく咳払いをした。
「いや……ちょっと、橘先輩が、ここで勉強してるって聞いたからさ……」
駿にとって、橘先輩はただただ眩しすぎる「高嶺の花」だった人だ。当時は普通に手が届かなくて諦めた、駿の甘酸っぱい過去の失恋。
だけど、今の駿の横顔を見ていると、何かが確実に変わったのが分かった。小1のあの日からずっとあいつを縛り付けていた重い鎖を、僕との和解でようやく手放すことができたんだ。だからこそ、こうして一人の男子高校生として、少しだけ自分の恋に前を向く余裕が生まれたのかもしれない。あいつのそんな不器用な変化が、僕にはたまらなく嬉しかった。
「あ、みんないるじゃん。お疲れー」
その時、図書室の入り口から、もう一人の名前も知らない女の先輩と楽しそうに話をしながら入ってきた綺麗な人が、僕たちの姿を見つけてパタパタと嬉しそうに駆け寄ってきた。駿がずっと見上げていた、高嶺の花――部活の先輩で今は受験生である、橘先輩だった。
「あ、橘先輩……! お疲れ様です。どうしたんですか?」

