ウツシアイ

週末には、おばあちゃんたちの家や、母さんの家に遊びに行おう。これからはいつでも、母さんが冷たいいちごミルクを用意して待っててくれる。
新しい生活、僕たちの絆は何も変わらない。
これからもずっと、僕の隣にいて。最高の相棒として、一緒に生きてほしい』

文字が書き終えられ、ノートの上に静かな沈黙が流れる。
君への恋心は、これからもこの日記に書くことはないし、伝えるつもりもない。手を繋ぐことも、抱きしめることもできないこの恋は、僕の胸の中だけで一生鍵をかけておく。
だけど、それはもう『悲しい叶わぬ恋』なんかじゃない。
同じ肉体を分け合い、心を通わせてきた僕たちだからこそ、この秘めた想いは、一生君を裏切らない、君の人生を隣で守り抜くための絶対的な誓いになった。
恋だとか愛だとかいう言葉じゃ収まらないくらいの深い絆を、僕は「相棒」という名前で呼ぶことに決めたんだ。
インクが乾くのを待って、僕は静かにノートを閉じた。
いつものようにスマホを金庫にしまい、ベッドに入ってゆっくりと目を閉じる。
高校生活も終わり、来週から二人だけの生活、新しいアパートの引っ越しが待ってる。姿は見えなくても、アキが僕の隣にいてくれる。どんな未来が待っていても二人ならきっと大丈夫だ。
胸を満たす暖かい決意を抱きながら、僕はゆっくりと意識を手放していった。
――高校生活のすべてが過去へと変わった、その翌朝。
まぶたの裏に柔らかな春の光を感じて、私は目を覚ました。
身体を起こし、自分お大きな手のひらを見つめる。指先を動かす感覚が、すんなりと私に馴染んでいく。
ベッドから降りて机に向かうと、そこには一冊のノートと、サクが昨夜使い終えたばかりの黒いボールペンが静かに置かれていた。ペンに触れると、まだどこかサクの手のぬくもりが残っているような気がした。
私はノートを開き、サクの最後の言葉を胸の奥深くに抱きしめるようにして読み終えた。
そして、そのすぐ下の、これが最後となる余白に、私の丸い文字で、ありったけの愛を込めて最後の一行を書き添えた。
『うん、サク。これからもずっと一緒だよ。私たちの行く未来へ、飛び立とう』
『いちばんたいせつなことは、目に見えない――』
あの文化祭の日、私たちがステージに響かせた言葉が、今、私たちの心の中に本物の、決して消えない温もりとなって、永遠に溶け込んでいった。
ノートをパタンと閉じ、私は手のひらの中の新しい鍵をぎゅっと握りしめて、新生活の始まりを告げる眩しい春の青空を見上げた。
二人の飛行士の旅は、ここからまた、新しく始まっていく。