最前列には、涙を何度もハンカチで拭っているおばあちゃんと、隣で優しく微笑むおじいちゃん。そして最後列のすぐ近くには、誇らしげにこちらを見つめる母さんの姿があった。かつて文化祭の日に、暗がりから見守るしかなかった母さんは、今、堂々と僕たちの晴れ舞台に拍手を送ってくれている。
式が終わり、喧騒に包まれる校庭に出ると、駿とめいさんが待ってくれていた。
「サク、卒業おめでとう。…本当、よかったな」
駿がいつものようにガシッと僕の肩を叩く。その目には、もうあの痛々しい十字架の影はなかった。お互いに色んなものを背負い、それを一緒に乗り越えてきた、世界でたった一人の大切な親友からの、心からの祝福がそこにあった。
「朔夜先輩、ご卒業おめでとうございます。アキ先輩にも、よろしく伝えてくださいね」
めいさんが僕の目を真っ直ぐに見つめ、小さな花束を手渡してくれた。アキの友達として、僕たちの境界線を誰よりも優しく守り続けてくれた後輩の笑顔に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「二人とも、本当にありがとう」
たくさんの大切な人たちに見送られながら、僕は住み慣れた学び舎を後にした。
引き止める絶望は、もうどこにもない。僕たちの前には、どこまでも青く、広い未来の空が広がっていた。
祖父母の家に帰り、慣れ親しんだ自分の部屋の机の前に座る。
部屋の中には、段ボール箱がいくつも並んでいた。明日、僕たちはこの部屋を出て、自分たちの力で見つけた小さなアパートへと引っ越す。
僕の手のひらの中には、小さな銀色の鍵が握られていた。二人で新生活を始めるための、新しい部屋の鍵。
僕は、引き出しの奥から、中1のあの夏から使い続けてきた、角の擦り切れた一冊のノートを取り出した。
今日で、この場所で交わす交換日記も、一つの節目を迎える。
僕は黒いボールペンを握り、アキへ向けて、そして僕たち自身へ向けて、最後のメッセージを綴り始めた。
『アキ。今日で高校生活が終わったな。
中一の夏、アイスがなくなったあの日から、僕たちの旅が始まったんだ。
実体がなくて消えてしまいそうだと泣いていたアキ。完璧を求められて壊れそうだった僕。
僕たちは、二人で一つだった。アキがいてくれたから、僕は今日まで生きてこられた。
来週からは、二人だけの新しい生活が始まる。誰かの手の中じゃなく、自分たちの足で歩いていく一人暮らしだ。
式が終わり、喧騒に包まれる校庭に出ると、駿とめいさんが待ってくれていた。
「サク、卒業おめでとう。…本当、よかったな」
駿がいつものようにガシッと僕の肩を叩く。その目には、もうあの痛々しい十字架の影はなかった。お互いに色んなものを背負い、それを一緒に乗り越えてきた、世界でたった一人の大切な親友からの、心からの祝福がそこにあった。
「朔夜先輩、ご卒業おめでとうございます。アキ先輩にも、よろしく伝えてくださいね」
めいさんが僕の目を真っ直ぐに見つめ、小さな花束を手渡してくれた。アキの友達として、僕たちの境界線を誰よりも優しく守り続けてくれた後輩の笑顔に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
「二人とも、本当にありがとう」
たくさんの大切な人たちに見送られながら、僕は住み慣れた学び舎を後にした。
引き止める絶望は、もうどこにもない。僕たちの前には、どこまでも青く、広い未来の空が広がっていた。
祖父母の家に帰り、慣れ親しんだ自分の部屋の机の前に座る。
部屋の中には、段ボール箱がいくつも並んでいた。明日、僕たちはこの部屋を出て、自分たちの力で見つけた小さなアパートへと引っ越す。
僕の手のひらの中には、小さな銀色の鍵が握られていた。二人で新生活を始めるための、新しい部屋の鍵。
僕は、引き出しの奥から、中1のあの夏から使い続けてきた、角の擦り切れた一冊のノートを取り出した。
今日で、この場所で交わす交換日記も、一つの節目を迎える。
僕は黒いボールペンを握り、アキへ向けて、そして僕たち自身へ向けて、最後のメッセージを綴り始めた。
『アキ。今日で高校生活が終わったな。
中一の夏、アイスがなくなったあの日から、僕たちの旅が始まったんだ。
実体がなくて消えてしまいそうだと泣いていたアキ。完璧を求められて壊れそうだった僕。
僕たちは、二人で一つだった。アキがいてくれたから、僕は今日まで生きてこられた。
来週からは、二人だけの新しい生活が始まる。誰かの手の中じゃなく、自分たちの足で歩いていく一人暮らしだ。

