お母さんと実家のコタツで手を重ね合わせ、水底の暗闇に本物の光を受け取ったあの日から、私たちの時間は静かに、だけど新しく、力強く動き出した。
私はあの日、祖父母の家へ続く暗い坂道を歩きながら、胸の奥にある世界で一番温かいバトンを必死に抱きしめていた。一刻も早く、自分の部屋に戻ってノートを開きたかった。
自室に戻り、まだ誰も何も書いていない真っ白なページに、黒いボールペンの先を落とした。いつもなら「今日あったこと」を淡々と書くはずのペン先が、今夜は激しく震えていた。胸の奥から溢れ出る感情に、手の動きが追いつかない。私は、まだ見ぬ明日を迎えるサクに向けて、ありったけの言葉を綴った。
『サク。お母さんに会ってきたよ。私の名前を呼んで、たくさん抱きしめてくれた。
コタツで食べたプリンも、いちごミルクも、すごく美味しかった。
バトンを繋いでくれて、本当にありがとう。私、生きていていいんだって、初めて思えたよ』
それから、私たちは何度もノートを介して、これからの未来について話し合った。
お母さんは涙を流しながら「いつでも帰っておいで」と言ってくれた。けれど、私たちの出した答えは違った。
中一の夏、お母さんと離れて孤独のどん底にいた僕たちを、何も言わずに引き取り、今日まで温かいご飯と溢れんばかりの愛情で育ててくれたおじいちゃんとおばあちゃん。学校が近いという理由もあったけれど、何より、今まで私たちを支え続けてくれた二人に、高校を卒業するまでの残りの時間をかけて、たくさんの「ありがとう」を返したかった。
そして、高校を卒業したら、お母さんの実家に甘えるのではなく、自分たちの足で社会へ一歩を踏み出すために、一人暮らしを始めようと思った。
それは、私とサク、二人で一つの人生を、新しく自立して歩んでいくための決意だった。
お母さんも、その私たちの選択を「サク、アキちゃん、優しい子に育ってくれてありがとう」と、涙を浮かべながら誇らしそうに応援してくれた。
それからの高校生活は、まるでこれまでの霧が嘘のように、穏やかで優しい光に満ちていた。
週末にはお母さんのいる実家へ遊びに行き、お父さんのお仏壇に手を合わせる。かつては拒絶の象徴だったあの坂道は、今では家族を繋ぐ温かい通り道へと変わっていた。学校では、駿が相変わらずバカなことを言って私たちを笑わせ、図書室では、めいちゃんが私の親友として、いつもと変わらない特別な笑顔で迎えてくれる。
私はあの日、祖父母の家へ続く暗い坂道を歩きながら、胸の奥にある世界で一番温かいバトンを必死に抱きしめていた。一刻も早く、自分の部屋に戻ってノートを開きたかった。
自室に戻り、まだ誰も何も書いていない真っ白なページに、黒いボールペンの先を落とした。いつもなら「今日あったこと」を淡々と書くはずのペン先が、今夜は激しく震えていた。胸の奥から溢れ出る感情に、手の動きが追いつかない。私は、まだ見ぬ明日を迎えるサクに向けて、ありったけの言葉を綴った。
『サク。お母さんに会ってきたよ。私の名前を呼んで、たくさん抱きしめてくれた。
コタツで食べたプリンも、いちごミルクも、すごく美味しかった。
バトンを繋いでくれて、本当にありがとう。私、生きていていいんだって、初めて思えたよ』
それから、私たちは何度もノートを介して、これからの未来について話し合った。
お母さんは涙を流しながら「いつでも帰っておいで」と言ってくれた。けれど、私たちの出した答えは違った。
中一の夏、お母さんと離れて孤独のどん底にいた僕たちを、何も言わずに引き取り、今日まで温かいご飯と溢れんばかりの愛情で育ててくれたおじいちゃんとおばあちゃん。学校が近いという理由もあったけれど、何より、今まで私たちを支え続けてくれた二人に、高校を卒業するまでの残りの時間をかけて、たくさんの「ありがとう」を返したかった。
そして、高校を卒業したら、お母さんの実家に甘えるのではなく、自分たちの足で社会へ一歩を踏み出すために、一人暮らしを始めようと思った。
それは、私とサク、二人で一つの人生を、新しく自立して歩んでいくための決意だった。
お母さんも、その私たちの選択を「サク、アキちゃん、優しい子に育ってくれてありがとう」と、涙を浮かべながら誇らしそうに応援してくれた。
それからの高校生活は、まるでこれまでの霧が嘘のように、穏やかで優しい光に満ちていた。
週末にはお母さんのいる実家へ遊びに行き、お父さんのお仏壇に手を合わせる。かつては拒絶の象徴だったあの坂道は、今では家族を繋ぐ温かい通り道へと変わっていた。学校では、駿が相変わらずバカなことを言って私たちを笑わせ、図書室では、めいちゃんが私の親友として、いつもと変わらない特別な笑顔で迎えてくれる。

