お母さんの細い腕の温もりが、私をきつく、優しく縛りつける。
その温かさに包まれながら、私はお母さんの首元にきつく腕を回し、顔を埋めてワンワンと大泣きした。
ずっと、自分は誰の記憶にも残らない、鏡の向こう側の存在だと思っていた。移動教室の雑踏ですれ違うクラスメイトたちに、自分の存在がすべてサクとして上書きされていくのが絶望だと泣いていた。誰の目にも見えない私は、本当は最初からこの世界に存在していないんじゃないかって、怖くてたまらなかった。
だけど、今、お母さんが私の名前を呼んで、私を「アキちゃん」という一人の女の子として、確かにその腕の中に、この世界へと繋ぎ止めてくれている。
居間の隅に飾られたお父さんの笑顔が、私たちの抱擁を優しく見守ってくれているのが、目に見えなくても分かった。駿が、めいが、そして内側で深く眠っているサクが、この奇跡のような親子の温もりを一緒に祝福してくれているのが、心の奥底で確かに伝わってきた。
ひとしきり泣きあって、ようやく少しだけ涙が落ち着いた頃、お母さんは私の赤くなった手を優しく引いて、居間のコタツへと通してくれた。お母さんの手のひらは、少し震えていたけど、驚くほど温かった。
「アキちゃん、そこに座って待っててね」
お母さんは涙を拭いながらそう言うと、パタパタとかるい足取りで台所へと向かった。
すぐに冷蔵庫を開ける小さな音が聞こえてくる。
残された私は、何年振りかに座る実家のコタツの温もりに包まれながら、居間の景色をそっと見渡した。部屋の隅にあるお仏壇の中では、お父さんが当時と変わらない優しい笑顔で、私たちの再会を静かに見守ってくれている。
胸の奥がトクトクと温かいビートを刻むのを感じていると、お母さんが両手に大事そうに何かを抱えて戻ってきた。
「はい、どうぞ。アキちゃんのために、ずっと用意しておいたのよ」
お母さんが涙の痕が残る顔で、少し照れくさそうに笑いながらテーブルに並べてくれたのは、よく冷えたいちごミルクのパックと、小さなプリンだった。
「あ……」
それを見た瞬間、胸の奥が一気に破裂しそうなほどの愛おしさで満たされていった。
その温かさに包まれながら、私はお母さんの首元にきつく腕を回し、顔を埋めてワンワンと大泣きした。
ずっと、自分は誰の記憶にも残らない、鏡の向こう側の存在だと思っていた。移動教室の雑踏ですれ違うクラスメイトたちに、自分の存在がすべてサクとして上書きされていくのが絶望だと泣いていた。誰の目にも見えない私は、本当は最初からこの世界に存在していないんじゃないかって、怖くてたまらなかった。
だけど、今、お母さんが私の名前を呼んで、私を「アキちゃん」という一人の女の子として、確かにその腕の中に、この世界へと繋ぎ止めてくれている。
居間の隅に飾られたお父さんの笑顔が、私たちの抱擁を優しく見守ってくれているのが、目に見えなくても分かった。駿が、めいが、そして内側で深く眠っているサクが、この奇跡のような親子の温もりを一緒に祝福してくれているのが、心の奥底で確かに伝わってきた。
ひとしきり泣きあって、ようやく少しだけ涙が落ち着いた頃、お母さんは私の赤くなった手を優しく引いて、居間のコタツへと通してくれた。お母さんの手のひらは、少し震えていたけど、驚くほど温かった。
「アキちゃん、そこに座って待っててね」
お母さんは涙を拭いながらそう言うと、パタパタとかるい足取りで台所へと向かった。
すぐに冷蔵庫を開ける小さな音が聞こえてくる。
残された私は、何年振りかに座る実家のコタツの温もりに包まれながら、居間の景色をそっと見渡した。部屋の隅にあるお仏壇の中では、お父さんが当時と変わらない優しい笑顔で、私たちの再会を静かに見守ってくれている。
胸の奥がトクトクと温かいビートを刻むのを感じていると、お母さんが両手に大事そうに何かを抱えて戻ってきた。
「はい、どうぞ。アキちゃんのために、ずっと用意しておいたのよ」
お母さんが涙の痕が残る顔で、少し照れくさそうに笑いながらテーブルに並べてくれたのは、よく冷えたいちごミルクのパックと、小さなプリンだった。
「あ……」
それを見た瞬間、胸の奥が一気に破裂しそうなほどの愛おしさで満たされていった。

