ウツシアイ

翌朝、あるいは数日後。朝、目を覚ました私は、肺いっぱいに冷たい空気を吸い込みながら、今日という朝をこの身体が引き当てたことを理解した。
「あ、私の番だ…」
いつのようにベッドから起き上がり、何気なく机の上に目を向けると、そこには一冊の大学ノートが、昨日の夜にサクが慌てておいたかのように少し斜めに置かれていた。
いつもなら、サクが残した日記は『完璧に繋いだぞ』という短い一言や、その日の出来事が淡々と並んでいるはずだった。だけど、今朝のノートのページは違った。黒いインクの文字が、ノートの余白を埋め尽くすほどの熱量で、激しく震えた跡を遺しながらびっしりと書き連ねられていた。
私は椅子の背もたれを引き寄せ、巣寄せられるようにその文字を追い始めた。
『アキ。驚かせてごめん。でも、今から書くことを、どうか一文字も飛ばさずに、落ち着いて読んでほしい。』
サクの文字を一行、また一行と読み進めるうちに、私の心臓が耳の奥でドクドクと早鐘を打ち始めた。
週明けの火曜日の放課後、誰もいない教室で、駿がサクに全てを打ち明けたということ、小一のあの日、お父さんが駿の代わりにトラックの前に飛び込んで亡くなったこと。
そして――あの文化祭の二日間、サクのお母さんが客席の最後列で、私たちの舞台をずっと見守ってくれていたということ。