まず、アキにはまだ一度も話していなかった、僕の家族の過去のことから書くね。僕の父さんはね、僕が小学校一年生の時に、交通事故で亡くなっているんだ。
そして今日の放課後に、誰もいない教室で駿から呼び出されて、その事故のすべての真実を打ち明けられた。
小学校一年生のある日、トラックの前に飛び出した駿を庇って、僕の父さんは身代わりに亡くなったんだってさ。駿はその重すぎる記憶をたった一人で背負いながら、僕たちを守るためにずっと隣にいてくれたんだ。ただ、あいつが今まで僕たちに異様なまでに優しくしてくれたのは、ただの罪悪感や義務なんかじゃなかった。あいつ、僕たちのことが本当に大切になっちゃったんだって、泣いてたよ。あいつは、僕とアキの、世界で一番の親友だよ。』
インクがノートに染み込んでいくのを見つめながら、僕は実家での出来事へとペンを進めた。
『僕はね、毎年お母さんと鉢合わせるのが嫌で、父さんの命日の当日の夜に、日にちをずらして一人でお墓参りに行っていたんだ。アキには話していなかったけど、僕の勝手な意地で逃げ回っていた。
だけど、本当は違ったんだ。お母さんと駿は、僕が当日に絶対に来ないのを知りながら、毎年命日の当日に、二人で一緒にお墓に花を供えに行ってくれていたらしい。
そして、あの文化祭の二日間、お母さんは客席の最後列で、僕たちの舞台をずっと見守ってくれていた。
お母さんは、二日目のステージに上がったのがアキだって、すぐに気づいてたんだって。歩き方や、声のトーンで、アキの名前を呼んで、顔をぐしゃぐしゃにして大泣きしてたらしいよ。
アキ、僕たちは、お母さんに嫌われてなんかいなかった。二人になった僕たちを不気味だって思って捨てたんじゃなかったんだ。
お母さんは、僕が求めてくれた理想に応えられなくて、アキが生まれるまで追い詰めてしまったことを、ずっと、ずっと一人で後悔して、泣いてたんだよ。目には見えなかったけど、僕たちのすぐ近くには、ずっとお母さんの愛があったんだよ』
書きながら、また涙がボトボトとノートの余白に落ちて、黒いインクを小さく滲ませた。ずっと、母さんに拒絶されたと思い込み、自分のせいでアキを『実態のない幽霊』にしている自分を責め続けていた。けれど、世界は僕が思っているよりも、ずっと暖かい光で満ちていた。
僕は涙を拭い、この日記の、長々綴った本当の意味を込めて、最後の結びの言葉を強く書き込んだ。
『今日、僕は数年ぶりに母さんの家に行って、母さんとたくさん話をして、抱きしめ合った。母さんお体は、驚くほど小さくて軽かった。
明日、実家でお母さんが待ってる。今度はアキの番だよ。怖がらなくていい。僕たちの、本当の家族のところへ、母さんに会いに行っておいで。』
パタンと、ノートを閉じる。
ボールペンを机に置き、僕はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
天井を見つめる僕の胸は、激しい感情の昂ぶりのあとの、心地よい静けさと温もりで満たされている。
深い水底のような眠りへと意識が沈んでいく中、僕は内側で眠る愛しい女の子の魂に、『バトンは繋いだぞ、アキ』とそっと語りかけるようにして、静かに目を閉じた。
そして今日の放課後に、誰もいない教室で駿から呼び出されて、その事故のすべての真実を打ち明けられた。
小学校一年生のある日、トラックの前に飛び出した駿を庇って、僕の父さんは身代わりに亡くなったんだってさ。駿はその重すぎる記憶をたった一人で背負いながら、僕たちを守るためにずっと隣にいてくれたんだ。ただ、あいつが今まで僕たちに異様なまでに優しくしてくれたのは、ただの罪悪感や義務なんかじゃなかった。あいつ、僕たちのことが本当に大切になっちゃったんだって、泣いてたよ。あいつは、僕とアキの、世界で一番の親友だよ。』
インクがノートに染み込んでいくのを見つめながら、僕は実家での出来事へとペンを進めた。
『僕はね、毎年お母さんと鉢合わせるのが嫌で、父さんの命日の当日の夜に、日にちをずらして一人でお墓参りに行っていたんだ。アキには話していなかったけど、僕の勝手な意地で逃げ回っていた。
だけど、本当は違ったんだ。お母さんと駿は、僕が当日に絶対に来ないのを知りながら、毎年命日の当日に、二人で一緒にお墓に花を供えに行ってくれていたらしい。
そして、あの文化祭の二日間、お母さんは客席の最後列で、僕たちの舞台をずっと見守ってくれていた。
お母さんは、二日目のステージに上がったのがアキだって、すぐに気づいてたんだって。歩き方や、声のトーンで、アキの名前を呼んで、顔をぐしゃぐしゃにして大泣きしてたらしいよ。
アキ、僕たちは、お母さんに嫌われてなんかいなかった。二人になった僕たちを不気味だって思って捨てたんじゃなかったんだ。
お母さんは、僕が求めてくれた理想に応えられなくて、アキが生まれるまで追い詰めてしまったことを、ずっと、ずっと一人で後悔して、泣いてたんだよ。目には見えなかったけど、僕たちのすぐ近くには、ずっとお母さんの愛があったんだよ』
書きながら、また涙がボトボトとノートの余白に落ちて、黒いインクを小さく滲ませた。ずっと、母さんに拒絶されたと思い込み、自分のせいでアキを『実態のない幽霊』にしている自分を責め続けていた。けれど、世界は僕が思っているよりも、ずっと暖かい光で満ちていた。
僕は涙を拭い、この日記の、長々綴った本当の意味を込めて、最後の結びの言葉を強く書き込んだ。
『今日、僕は数年ぶりに母さんの家に行って、母さんとたくさん話をして、抱きしめ合った。母さんお体は、驚くほど小さくて軽かった。
明日、実家でお母さんが待ってる。今度はアキの番だよ。怖がらなくていい。僕たちの、本当の家族のところへ、母さんに会いに行っておいで。』
パタンと、ノートを閉じる。
ボールペンを机に置き、僕はベッドに仰向けに倒れ込んだ。
天井を見つめる僕の胸は、激しい感情の昂ぶりのあとの、心地よい静けさと温もりで満たされている。
深い水底のような眠りへと意識が沈んでいく中、僕は内側で眠る愛しい女の子の魂に、『バトンは繋いだぞ、アキ』とそっと語りかけるようにして、静かに目を閉じた。

