「ええ……ええ、わかってるわ。明日かもしれないし、もっと先かもしれない。でも私はいつまでも、何日でもここで待ってるから。アキちゃんが、私の大切な娘がいつ帰ってきてもいいようにずっとここで待ってる。毎日、あの子の好きな、いちごみるくやプリンを用意して、ここで待ってるから。だからその時は、思いっきり抱きしめさせてね、サク」
母さんの口から出た。「いちごみるく」や「プリン」と言う言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。本当に、駿からアキの好みを熱心に聞いて、ずっと覚えてくれていたんだ。
「うん。……僕の時よりもたくさん、たくさん抱きしめてあげて」
「ええ、もちろんよ。約束するわ。二人とも、私の大切な子供たちなんだから」
母さんはそう言って、涙の跡が残る顔で、これ以上ないほど愛おしそうな母親の顔で笑った。
実家からの帰り道、夜空を見上げながら歩く僕の足取りは、いつになく軽かった。
一刻も早く自分の部屋に戻って、机に向かいたかった。僕の胸の奥で今も静かに脈を打っているこの熱いバトンを、一文字もこぼさないように、すべてノートに書き写さないといけない。アキが、次にこの体に目覚めた時、真っ先にこの救いを受け取れるように。
祖父母の家に戻り、おじいちゃんとおばあちゃんに「ただいま」と声をかける。二人は僕の少し赤い目を見て不思議そうな顔をしたけど、何も言わずに「おかえり。ご飯、温め直そうかね」といつも通り優しく笑ってくれた。
自分お部屋に入り、制服のまま机の前に座る。
引き出しの奥から、僕たちの命綱であり、唯一の繋がりある一冊のノートを引っ張り出した。
表紙を撫でると、中一の夏から今日まで、飛び飛びの日付の中で二人で必死に繋いできた時間の重みが、手のひらを通して伝わってくる。
パッとノートを開き、まだ何も書いていない真っ白のページに黒いボールペンの先を 落とした。
いつもなら今日あったことを淡々と書くはずのペンの先が、今夜は激しく震えていた。胸の奥から溢れ出る感情に、手の動きが追いつかない。僕は深く息を吸いこみ、一文字一文字、魂を削るようにして、まだ見ぬアキに向けて言葉を紡ぎ始めた。
『アキ、驚かせてごめん。
でも、今から書くことを、どうか一文字も飛ばさずに、落ち着いて読んでほしい。
母さんの口から出た。「いちごみるく」や「プリン」と言う言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなる。本当に、駿からアキの好みを熱心に聞いて、ずっと覚えてくれていたんだ。
「うん。……僕の時よりもたくさん、たくさん抱きしめてあげて」
「ええ、もちろんよ。約束するわ。二人とも、私の大切な子供たちなんだから」
母さんはそう言って、涙の跡が残る顔で、これ以上ないほど愛おしそうな母親の顔で笑った。
実家からの帰り道、夜空を見上げながら歩く僕の足取りは、いつになく軽かった。
一刻も早く自分の部屋に戻って、机に向かいたかった。僕の胸の奥で今も静かに脈を打っているこの熱いバトンを、一文字もこぼさないように、すべてノートに書き写さないといけない。アキが、次にこの体に目覚めた時、真っ先にこの救いを受け取れるように。
祖父母の家に戻り、おじいちゃんとおばあちゃんに「ただいま」と声をかける。二人は僕の少し赤い目を見て不思議そうな顔をしたけど、何も言わずに「おかえり。ご飯、温め直そうかね」といつも通り優しく笑ってくれた。
自分お部屋に入り、制服のまま机の前に座る。
引き出しの奥から、僕たちの命綱であり、唯一の繋がりある一冊のノートを引っ張り出した。
表紙を撫でると、中一の夏から今日まで、飛び飛びの日付の中で二人で必死に繋いできた時間の重みが、手のひらを通して伝わってくる。
パッとノートを開き、まだ何も書いていない真っ白のページに黒いボールペンの先を 落とした。
いつもなら今日あったことを淡々と書くはずのペンの先が、今夜は激しく震えていた。胸の奥から溢れ出る感情に、手の動きが追いつかない。僕は深く息を吸いこみ、一文字一文字、魂を削るようにして、まだ見ぬアキに向けて言葉を紡ぎ始めた。
『アキ、驚かせてごめん。
でも、今から書くことを、どうか一文字も飛ばさずに、落ち着いて読んでほしい。

