私はただ、私を世界に繋ぎ止めてくれている大切な人たちへ届くように、サクの体を借りて、私の魂のすべてで最後のセリフを響かせた。
「『いちばんたいせつなことは、目に見えない――』」
それは、実態のない私からの、最大の愛の告白だった。体育館中に割れんばかりの拍手が鳴り響く中、私は胸いっぱいの達成感を抱き締めながら、無事にサクの舞台を守りきれた安堵に、そっと涙を拭っていた。
文化祭の二日目も無事に終わり、週が明けた火曜日の放課後。
片付けも全て終わり、祭りの後の喧騒が完全に遠かった誰もいない教室で、僕は駿に呼び出されていた。
「サク、最高の飛行士だったぜ。サクも、アキもな」
窓から差し込む西陽を背に受けながら、駿がいつもの気怠げな風を纏い、けれどどこか引き締まった、低い声で言った。
「ああ、アキのメモのおかげだよ。……それで、話ってなんだよ。わざわざこんな時間に呼び出して」
僕が問いかけると、駿は拳をきつく握りしめ、意を決したように僕の目をまっすぐに見つめてきた。その瞳には、今まで見たこともないような思い決意が宿っていた。
「……実はさ、あの二日間の文化祭、サクのステージを客席の後ろでずっと見てた人がいたんだ」
「…え?」
「サクのお母さんだよ。俺が内緒で招待した」
心臓がどくん、と大きく跳ねた。あれほど僕が拒絶し、あわないように父さんの墓参りの日にちすら執念でずらしていた母親が、すぐ近くにいた……?混乱し、言葉を失う僕を遮るように、駿は静かに言葉を重ねた。
「おばさん、一日目のサクを見て泣いてた。そして二日目、ステージに上がったのが『アキ』だってことも、すぐに気づいてたよ。歩き方や、声のトーンでな。おばさん、二日目は顔をぐしゃぐしゃにして、アキの名前を呼んで泣いてた」
「なんで…母さんが……」
頭の芯が真っ白になる。母さんはアキを、二重人格の僕を「不気味だ」と言って、父方の実家に預けたはずだ。なぜ今更、アキの名前を呼んで泣くんだ。
「サク。親父さんの墓参りも、毎年命日の『次の日に』に行ってるだろ。おばさんと鉢合わせたくないからって」
駿に核心を突かれ、僕は視線を落とした。胸の奥がちくりと痛む。
「……あ、ああ。…だって、当日行ったら、母さんと鉢合わせちゃうだろ。だから……」
「『いちばんたいせつなことは、目に見えない――』」
それは、実態のない私からの、最大の愛の告白だった。体育館中に割れんばかりの拍手が鳴り響く中、私は胸いっぱいの達成感を抱き締めながら、無事にサクの舞台を守りきれた安堵に、そっと涙を拭っていた。
文化祭の二日目も無事に終わり、週が明けた火曜日の放課後。
片付けも全て終わり、祭りの後の喧騒が完全に遠かった誰もいない教室で、僕は駿に呼び出されていた。
「サク、最高の飛行士だったぜ。サクも、アキもな」
窓から差し込む西陽を背に受けながら、駿がいつもの気怠げな風を纏い、けれどどこか引き締まった、低い声で言った。
「ああ、アキのメモのおかげだよ。……それで、話ってなんだよ。わざわざこんな時間に呼び出して」
僕が問いかけると、駿は拳をきつく握りしめ、意を決したように僕の目をまっすぐに見つめてきた。その瞳には、今まで見たこともないような思い決意が宿っていた。
「……実はさ、あの二日間の文化祭、サクのステージを客席の後ろでずっと見てた人がいたんだ」
「…え?」
「サクのお母さんだよ。俺が内緒で招待した」
心臓がどくん、と大きく跳ねた。あれほど僕が拒絶し、あわないように父さんの墓参りの日にちすら執念でずらしていた母親が、すぐ近くにいた……?混乱し、言葉を失う僕を遮るように、駿は静かに言葉を重ねた。
「おばさん、一日目のサクを見て泣いてた。そして二日目、ステージに上がったのが『アキ』だってことも、すぐに気づいてたよ。歩き方や、声のトーンでな。おばさん、二日目は顔をぐしゃぐしゃにして、アキの名前を呼んで泣いてた」
「なんで…母さんが……」
頭の芯が真っ白になる。母さんはアキを、二重人格の僕を「不気味だ」と言って、父方の実家に預けたはずだ。なぜ今更、アキの名前を呼んで泣くんだ。
「サク。親父さんの墓参りも、毎年命日の『次の日に』に行ってるだろ。おばさんと鉢合わせたくないからって」
駿に核心を突かれ、僕は視線を落とした。胸の奥がちくりと痛む。
「……あ、ああ。…だって、当日行ったら、母さんと鉢合わせちゃうだろ。だから……」

