昨日の夜、日記に残されたサクの『完璧に繋いたぞ』という短い文字を思い出し、胸が暑くなる。今度は私の番だ。同じ劇をもう一度、昨日と同じように完璧に。サクに恥をかかせるわけにはいかない。
男の子の制服に袖を通し、髪をサクと同じようにセットする。鏡の前に映る姿はどう見てもサクだ。けれど、その胸の奥にあるのは、サクに焦がれ、初めてできた友達に救われた、一人の女の子の魂だ。サクが昨日ステージに残してくれた熱量、セリフの残り香が、この体の中に確かに息づいていた。
「アキ先輩、おはようございます!」
体育館の裏口、搬入口の陰で、めいさんが声をかけてくれた。彼女は私の顔を見た瞬間、そのわずかな歩幅の小ささと、制服の着こなしのニュアンスだけで、パッとその表情を輝かせた。
「めいさん、昨日サクの舞台見てくれた?」
「はい! すごくかっこよかったです。でも、昨日朔夜先輩のセリフのタイミング、私が図書室で一緒に練習したアキ先輩のやり方に、すごく似てた気がします。朔夜先輩、ちゃんとアキ先輩のノートを読み込んで、心を受け継いでましたよ」
「……うん。だから、今日は私が、私たちの飛行士を完成させるね」
めいさんは力強く頷き、「客席の最前列から、ずっとアキ先輩だけを見つめてますから。図書室での練習通りにやれば、絶対に大丈夫です!」と、私だけの友達として最高の笑顔で背中を押してくれた。
本番のベルが鳴り、暗転したステージへと足を踏み出す。
まばゆいスポットライトを浴びた瞬間、昨日とは全く違う緊張感が私の身体を支配した。男の子の低い声を意識しながら、けれどアキとしてのひたむきな感情を、一言一言のセリフに乗せていく。
客席を埋め尽くす何百人もの観客は、誰もが昨日と同じ「城ヶ崎くん」が劇をやっていると思い込んでいる。
私は、誰にも見破られないように必死に『男の子のフリ』を続けていた。昨日と同じ黄色い飛行機の前に立ち、ただひたすらに、目の前の王子さまと言葉を交わし、私のすべてをステージにぶつけ続けた。
ステージの端、地球のバラの一員として控える駿が、すべてを察した優しい目で私を見守っている。
客席の最前列で、めいさんが「アキ先輩、頑張れ」と何度も口パクで、真っ直ぐなエールを送り続けてくれている。
緊張に震えそうになる心を、二人の視線がしっかりと支えてくれた。
男の子の制服に袖を通し、髪をサクと同じようにセットする。鏡の前に映る姿はどう見てもサクだ。けれど、その胸の奥にあるのは、サクに焦がれ、初めてできた友達に救われた、一人の女の子の魂だ。サクが昨日ステージに残してくれた熱量、セリフの残り香が、この体の中に確かに息づいていた。
「アキ先輩、おはようございます!」
体育館の裏口、搬入口の陰で、めいさんが声をかけてくれた。彼女は私の顔を見た瞬間、そのわずかな歩幅の小ささと、制服の着こなしのニュアンスだけで、パッとその表情を輝かせた。
「めいさん、昨日サクの舞台見てくれた?」
「はい! すごくかっこよかったです。でも、昨日朔夜先輩のセリフのタイミング、私が図書室で一緒に練習したアキ先輩のやり方に、すごく似てた気がします。朔夜先輩、ちゃんとアキ先輩のノートを読み込んで、心を受け継いでましたよ」
「……うん。だから、今日は私が、私たちの飛行士を完成させるね」
めいさんは力強く頷き、「客席の最前列から、ずっとアキ先輩だけを見つめてますから。図書室での練習通りにやれば、絶対に大丈夫です!」と、私だけの友達として最高の笑顔で背中を押してくれた。
本番のベルが鳴り、暗転したステージへと足を踏み出す。
まばゆいスポットライトを浴びた瞬間、昨日とは全く違う緊張感が私の身体を支配した。男の子の低い声を意識しながら、けれどアキとしてのひたむきな感情を、一言一言のセリフに乗せていく。
客席を埋め尽くす何百人もの観客は、誰もが昨日と同じ「城ヶ崎くん」が劇をやっていると思い込んでいる。
私は、誰にも見破られないように必死に『男の子のフリ』を続けていた。昨日と同じ黄色い飛行機の前に立ち、ただひたすらに、目の前の王子さまと言葉を交わし、私のすべてをステージにぶつけ続けた。
ステージの端、地球のバラの一員として控える駿が、すべてを察した優しい目で私を見守っている。
客席の最前列で、めいさんが「アキ先輩、頑張れ」と何度も口パクで、真っ直ぐなエールを送り続けてくれている。
緊張に震えそうになる心を、二人の視線がしっかりと支えてくれた。

