ウツシアイ

女の子の友達と、こんな風に腕を組んで歩く日常。
サクが私を外の世界へ連れ出してくれたからこそ、私は今、一人の人間としてここに立っている。 
「うん!行こう、めいさん!」
改札に切符を通し、ホームへと向かう階段を駆け上がる。
十月の少し冷たい秋風が私たちの髪を揺らしたけど、サクのパーカーに包まれた私の身体は、驚くほどポカポカと温かかった。
藤沢駅で江ノ電に乗り換えると、車内の空気は一気に『日常』から『旅』の色へと塗り替えられた。
緑色のレトロな車両は、平日の全中ということもあって適度に空いていた。三人で並んでロングシートに腰をかけると、木目を基調とした床からガタゴトと心地のいい振動が身体に伝わってきた。
窓の外には、線路のすぐ脇まで民家の生垣が迫る景色が流れていく。
学校では今頃、二時間目の授業が始まっているはずだった。そう思うと、なんだか少し悪いことをしているような、だけどそれ以上に特別な秘密を共有しているような高揚感をくすぐる。
「…アキ先輩、さっきからずっと外見てますね。そんなに江ノ電珍しいですか?」
「えっ?あ、ううん……ただ、平日のこんな時間に電車に乗ってるのが、なんだか不思議で」
私の返事に、隣に座るめいさんは「あ、わかります!」と楽しそうに返事をした。
「私は、今朝ベッドから起きて制服じゃなくて私服を着た瞬間から、なんかドラマみたいだなってずっとワクワクしてました。アキ先輩、今日はいっぱい写真撮りましょうね!」
「うん、そうだね」
私に腕を絡めたまま、めいさんは本当に楽しそうに微笑む。
窓の外を流れるのどかな毛ぢきを眺めながら、私、本当にめいさんと友達になれたのだな、と絡められた腕の温もりをそっと噛み締めていた。
外の世界に自分個人の友隊なんて一人もいなくて、ずっと孤独だった私。
そんな私が、今こうして、友達と並んで、他愛のないおしゃべりをして笑い合っている。ただ、それだけの当たり前のことが、夢みたいに嬉しくて、愛おしくて仕方がなかった。
通路を挟んだ向かい側の座席に座る駿が、スマホからふと顔を上げて、窓の外を顎でしゃくった。
「ほら、二人とも。お喋りはその辺にして、前見てみろよ。そろそろだぞ」