ウツシアイ

「アキ先輩、とりあえず、それ、ロッカーに預けちゃいましょ!せっかくの江ノ島なんですから、学校の荷物なんて持ってたら勿体ないです!」
めいさんに言われ、ハッとした。確かに重たい教科書が詰まったバッグを持ったままでは、せっかくの旅も楽しめない。私は促されるまま改札前のコインロッカーに制服とスクールバッグを押し込んだ。カチャりと扉を閉めて鍵を掛ける。学校という日常をここに置いていくようで、なんだか急に心が軽くなった気がした。手元に残ったのは愛おしいサクの鞄だけ。
「よし、切符買うからちょっと待ってろ」
駿は販売機に向かうと、財布の代わりに携帯を取り出し、画面を操作して、携帯支払いで私たちの分の切符を流れるような操作でパパッと購入していく。
「ほら、アキ、めいちゃん。これ持っていくぞ」
渡された切符を握りしめる。
「アキ先輩、行きましょ!私、江ノ島に行くの、すっごい楽しみです!」
めいさんが私の腕もそっと自分の腕を絡めて、嬉しそうに微笑む。
(……あ、めいさん。出会った頃よりずっと明るくなったな)
絡められた腕の温もりを感じながら、私は隣を歩く彼女の横顔をそっと見つめた。
クラスに友達がいなくて、図書室と本の世界に逃げ込んでいたというめいさん。出会った当初の彼女は、どこか影があって、寂しげに心を閉ざしているように見えた。
その姿に私はどうしても、自分自身を重ねてしまっていた。私だって、外の世界に自分個人の友達なんて一人もいなくて、ずっと孤独だった。だから、図書室と言う閉じた世界の中で、私を見つけて本当の友達になってくれためいさんは、私にとっても、人生で初めてできた本当の友達だった。
同じように寂しさを抱えていた私とめいさんが、お互いにとっての『初めての友達』になれた。そして、最初はあんなに暗かっためいさんが、毎日一緒に笑い合って、いろんな話をしていくうちに、今ではこんなに真っ直ぐで明るい笑顔を私に向けてくれるようになった。彼女の世界を、そして私の世界を、この出会いがパッと明るく変えてくれたのだ。その純粋な温かさが、私にはたまらなく愛おしくて、感謝で胸がいっぱいになった。
直接言葉にするのは気恥ずかしいから、私はただ、腕の中の温もりをぎゅっと抱きしめ返すように、めいさんの歩調に合わせて一歩を踏み出した。