駿との話を終え、家に帰って夕飯とお風呂を済ませた僕は、自室の机に向かった。
椅子に腰をかけても、やっぱり身体の奥にズシリとした重みがある。これが、アキが一人で限界まで頑張ってくれた証拠だと思うと、愛おしさと同時に、ここまで追い詰めてしまった悔しさが込み上げてきた。
交換ノートを取り出し、ペンを握る。
アキはきっと自分が頑張りすぎていることに気づいてないし、わかっていたとしても僕に迷惑をかけないようにと『大丈夫だよ』と嘘をつくのはわかっていた。だから、駿から聞いた話は伏せておこうと思った。
アキが僕のために必死で隠そうとした優しさを、僕が台無しにするわけにはいかない。
僕は何も知らないただの『同居人』のふりをしてアキの背中を優しく小突いてやるだけでいい。それが僕にできるアキへの精一杯の優しさだ。
カチリ、とシャーペンをノックして、僕は夜の静寂の中に文字を紡ぎ始めた。
『十月五日
アキ、毎日劇の練習に部活にお疲れ様。
アキの残してくれたメモのおかげで、僕も駿もかなり助かってる。最高の飛行士になれそうだ。
それはそうと、次にアキが目を覚ました時の連絡。
目が覚めたら、駿に電話かけてあげて。なんか最近、寒くて朝起きれないらしいから。じゃあ、よろしく。』
『十月六日』
カーテンの隙間から差し込む十月の冷たい朝の光で、私は目を覚ました。
身体を起こした瞬間、ずしりと鉛のような重みが全身を襲った。ここ最近、サクのために完璧な飛行士を演じなくてはと、根を詰めすぎていた自覚はあった。それでもサクに心配かけないためにも頑張らないといけない。
私は自分の恋心と一緒にその無理を胸の奥へぎゅっと押し込むと、いつものように机に向かい、日記を広げた。
そこに残されていたサクの文字は、いつも通りのぶっきらぼうな筆跡で、けれど最後にポツリと、不思議なことが書かれていた。
『目が覚めたら、駿に電話かけてあげて。なんか最近、寒くて朝起きれないらしいから。じゃあ、よろしく。』
「サクったら……」
ノートを見つめたまま、私の口元から自然と小さな笑みが溢れた。駿が朝弱いのをそんな風に心配しているサクが、なんだか無性に愛おしかった。メッセージじゃ普通起きないだろうし、わざわざ「電話して」と書き残すあたりが、いかにも不器用な彼らしい友達思いの優しさだった。
椅子に腰をかけても、やっぱり身体の奥にズシリとした重みがある。これが、アキが一人で限界まで頑張ってくれた証拠だと思うと、愛おしさと同時に、ここまで追い詰めてしまった悔しさが込み上げてきた。
交換ノートを取り出し、ペンを握る。
アキはきっと自分が頑張りすぎていることに気づいてないし、わかっていたとしても僕に迷惑をかけないようにと『大丈夫だよ』と嘘をつくのはわかっていた。だから、駿から聞いた話は伏せておこうと思った。
アキが僕のために必死で隠そうとした優しさを、僕が台無しにするわけにはいかない。
僕は何も知らないただの『同居人』のふりをしてアキの背中を優しく小突いてやるだけでいい。それが僕にできるアキへの精一杯の優しさだ。
カチリ、とシャーペンをノックして、僕は夜の静寂の中に文字を紡ぎ始めた。
『十月五日
アキ、毎日劇の練習に部活にお疲れ様。
アキの残してくれたメモのおかげで、僕も駿もかなり助かってる。最高の飛行士になれそうだ。
それはそうと、次にアキが目を覚ました時の連絡。
目が覚めたら、駿に電話かけてあげて。なんか最近、寒くて朝起きれないらしいから。じゃあ、よろしく。』
『十月六日』
カーテンの隙間から差し込む十月の冷たい朝の光で、私は目を覚ました。
身体を起こした瞬間、ずしりと鉛のような重みが全身を襲った。ここ最近、サクのために完璧な飛行士を演じなくてはと、根を詰めすぎていた自覚はあった。それでもサクに心配かけないためにも頑張らないといけない。
私は自分の恋心と一緒にその無理を胸の奥へぎゅっと押し込むと、いつものように机に向かい、日記を広げた。
そこに残されていたサクの文字は、いつも通りのぶっきらぼうな筆跡で、けれど最後にポツリと、不思議なことが書かれていた。
『目が覚めたら、駿に電話かけてあげて。なんか最近、寒くて朝起きれないらしいから。じゃあ、よろしく。』
「サクったら……」
ノートを見つめたまま、私の口元から自然と小さな笑みが溢れた。駿が朝弱いのをそんな風に心配しているサクが、なんだか無性に愛おしかった。メッセージじゃ普通起きないだろうし、わざわざ「電話して」と書き残すあたりが、いかにも不器用な彼らしい友達思いの優しさだった。

